戦略プロセスは弁証法的政治過程
MOT知識創造経営とイノベーション
野中 郁次郎
p.43-44
戦略プロセスは,
ダイナミック
で
混沌
と
矛盾
に満ちている. このような状態において要請される方法論は,理屈ぬきにひたすら順応する, あるいは論理的二項対立には受動的に妥協するというのではなく,
二項対立を無化するような動的秩序
を抽出し,
矛盾を実践的に止揚
していく
弁証法
である. 矛盾は日常茶飯事であり,善に向ってその都度最適な知的パフォーマンスを連鎖して方向性を失わないのが
実践的三段論法
をもつ
フロネシス
である. 特殊と普遍を小前提(中範囲)で媒介する
実践的理性
を不断に行使していくのである.
このプロセスは,現実には他者との
社会的相互作用
を通じて目的を実現する
政治過程
であり,その根底にあるのが
政治的判断
である. 政治的判断力は,日常のありふれた言語・非言語的コミュニケーションのなかで他者の感情の理解、共感,感情の機微(ニュアンス) の察知, 自他相互介入のタイミングと限界点の配慮などを通じて行使される
Steinberger, 1993
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二項対立を無化
するような
動的秩序
二項対立