多人数で開発するOSSの著作者表記
OSSライセンスのMITライセンスやBSDライセンスについて、著作者の表示をすれば自由に使えるのだけど、これ多人数で開発するプログラムに適用した場合、全ての人のCopyright表記をするのか、ライセンスファイルにあるものだけでいいのかでもめそう。mhiramat 面白い話題なので自分の理解を書いてみる。
まず日本を含め150か国以上の国では、著作権は著作物が作られると同時に発生する「無方式主義」を採用している。だから「(C)の後に誰の名前を書くか」は著作者を決めるための手続きではない。see ベルヌ条約 ライセンスも「著作者が、他の人に、どういう条件で利用を許諾するか」を書いたものに過ぎないので、著作者が誰であるかを定めるための手続きではない。
複数人が共同して創作したプログラムで、各人の寄与を分離して個別に利用できない場合(共同著作物, 著作権法第2条1項12号)、全員の合意がなければ著作者人格権は行使できない(64条1項)し共有著作権の行使もできない(65条2項) やさしい表現をするなら「みんなで作ったものは、どう使うかについてみんなで合意を取って決めろ」ということ
なのでAさんとBさんが共同で開発したプログラムXについて、AさんがBさんの合意を取らずに勝手にライセンスを決めて利用許諾をしたら、単純にAさんが著作権侵害。
そのライセンスが「このソフトウェアはMITライセンスで、著作者として『プログラムX開発グループ』って表記したら自由に使っていいよ」みたいな公平そうなものであるかどうかは全く無関係。Bさんの合意を取らずにやったことが問題。
逆に、合意さえ取れるなら「このソフトウェアはAさんが単独で作ったものです」って表記しようがOK。OSSではレアかも知れないが、一般のソフトウェア開発ではAさんがBさんに外注に出しているケースでよくあること。
著作者がたくさんになると、ライセンスを変更しようとしたりした時に「全員の合意を得る」ことのコストがとても高くなるので、そうなる前に少数の人で意思決定できる仕組みに移行する。
具体例としてSign-offと呼ばれる仕組みがよく使われている
事前に著作者が諸々の合意をしたことを明確にしておく仕組み
例えば
著作権をプロジェクトに寄贈する
著作者人格権は行使しない
著作者を代表してAさんが人格権を行使することに合意する(64条3項) Linuxの例
意外と著作者人格権に関しては記載がないね
まあ人格権を行使させろなんて主張したらLinusに口汚く罵られるだろうけど…