マリボーに至る道
英語:The Road to Maribor
2020年11月3日~2021年1月にかけて展開された第3回ジャーニーのストーリー。全12週。 強化人間ともいえる「ウィッチャー」の創造に決定的な役割を果たした魔術師《アルズール》の人物像が、様々な視点で語られている。主要な登場人物は《スノードロップ》の別名を持つ元吟遊詩人ガランシアと、マントの男こと《マドック》。物語の舞台となっているマリボーは北方諸国のテメリアにある都市、またはその周辺一帯を指す。 全文
各話概要
1週目:ガランシアが隊商の聴衆を前に、怪物に襲われていたときにアルズールに助けられたエピソードを語る。
2週目:聴衆がアルズールについて議論する中、聴衆の中のハーフリングが先祖から聴いた話を語ろうとする。(Witcher の世界では魔術師やウィッチャーは一般人と異なり長命である)
3週目:ハーフリングによると、アルズールは捨て子で親はわからないらしい。騎士道精神を持った人物だったようだ。一方、ガランシアはアルズールの愛について語ろうとする。
4週目:ガランシアはアルズールの大切な女性リリアナについて語る。アルズールは愛ゆえにリリアナの「安全な世界」への野心を引き継いだらしい。そのための仲間もいるらしい。
5週目:その仲間とはウィッチャーに違いないと聴衆が声をあげると、今度はウィッチャーについての議論が盛り上がる。やがて、夜も更けたことから会はお開きとなる。
6週目:寝静まったガランシアたち隊商を、鼠の大群を率いたワーラットが襲うが、マントの男がこれを撃退する。隊商内にいた殺し屋とも呼ばれていた男こそ、ウィッチャーだった。
7週目:翌日、マントの男はガランシアに、なぜアルズールの愛などというデタラメを言うのか、と問いただす。マントの男はアルズールについて悪し様に語った後、露払いのため、隊商一行から離れ先行した。
8週目:ガランシアは夢の中でアルズールに助けられたときの状況を追体験する。目が覚めると、隊商一行は武装した農民に囲まれていた。
9週目:農民たちは干ばつで困窮し、旅人から略奪をしているらしい。隊商一行は「アルズールの複十字」と題された絵が保管されている宿屋の地下室に監禁された。宿屋の主人から、絵についての逸話を聞かされる。
10週目:別行動していたマントの男ことウィッチャーは、ガランシアたちが襲撃されたことに気がつき、隊商一行を救出した。
11週目:救出の後始末をしてる中、ガランシアはこのウィッチャーの名がマドックであり、アルズールが大事そうに語っていたと話し始める。マドックは怒り出すが、ガランシアはなおも続けた。
12週目:すると、奇跡が起こったように雨が降り出した。しかし、それは再び「門」が開いたことを意味していた。門から怪物が飛び出し、マリボーの街を破壊する。マドックは怪物の元へと向かう。
名前はガランシア、「スノードロップ」というのは吟遊詩人時代の芸名と思われる。(ガランシアについて:スノードロップは草花の名前で、和名はマツユキソウ、学名はガランサスである)
かつて怪物に襲われた際にアルズールに救助された。
普通に喋れず歌う形でしか言葉を発せなくなる呪いをかけられたとき、偶然アルズールに再会し、解呪を頼み込んだ。
そのときにアルズールの過去について本人から聞いた。
年齢がはっきりしない。少女のように思えるが、吟遊詩人歴が何十年もあるということであり、彼女も魔術師のような長命の存在なのかもしれない。
捨て子であり、マリボー郊外にある立派な屋敷の住人に拾われ、育てられた。
他の子どもたちから疎まれ、屋敷の図書室に引きこもっていた。
騎士道に憧れており、メティナのマテオ卿が書いた「騎士道精神への手引き」を熱心に読んでいた。(メティナはシントラから南、トゥサンからは南西にあるニルフガード領。マテオ卿については不明。そもそも言及したハーフリング自体も著者名に自信がない)
子どもながら盗賊に立ち向かうほど、正義感を持っていた。
何度も無謀な戦いをしている中で、魔術の才能が発覚した。
「力ある魔術師」の指導により、高名な魔術師となった。(コジモ・マラスピナが師匠と言われている) ユリの花を象ったメダルを大事にしていた。
リリアナという女性を愛しており、彼女の夢を引き継いだ。(リリアナはユリの花「リリウム」が由来の女性名である)
実験の出資者たちに、成果として造りあげたウィッチャーを見せていた。出資者相手には良い顔をしていたが、マドックにとっては冷たい人間であった。
かつてマリボーとエランダーがテメリアの王位をかけて長く争っていた際、アルズールはマリボーに加勢し、魔術で門を開き恐ろしい怪物を呼び寄せ、エランダーの兵を虐殺し、戦争を終結させた。
アルズールが呼び出し、召喚者であるアルズールを殺したと伝えられている怪物《ヴィー》は、アルズール自身(成れの果て?)であることが示唆されている。 ストーリー内では「マントの男」や「殺し屋」とも呼ばれている。
アルズールとの因縁があり、ガランシアはそれを知っていて、マントの男がマドックであることも直感していた。
アルズールとコジモによって、ウィッチャーにさせられた。
変異に失敗してウィッチャーに成り損ねた子どもたちの死体を埋めたことがトラウマになっている。
マドックはアルズールにとって初めて変異に成功したウィッチャーであることが示唆されている。
読みどころ
マリボーとエランダーの争いを終結させた話は、石原莞爾「最終戦争論」や核抑止論で語られる「決戦兵器(歴史的には核兵器)の登場により、戦争が起こらなくなる」の想定を思い起こさせる。ウィッチャーの世界では、その決戦兵器が暴走してしまっているが……。
アルズールの意図を知っているガランシアにとって、それは終わらない戦争を止めた愛の行為として映る。しかし、一般人(とくにエランダー側)にとっては虐殺でしかない。どの視点でみるかによって、人物像が180度変わることが描かれている。
アルズールに造られ、一時期仕えてもいたマドックにとっては、アルズールは憎しみの対象である。同時に「親」でもある点が示唆されている。これは Witcher3 において、ランバートがヴェセミルについて語った内容にもつながる。
「クリフハンガーエンディング」が採用されており、続編の存在が強く示唆されている。