SatoFC(Satoyama Fujisawa Campus)プロジェクトとは?
プロジェクト設立の経緯
2001年慶應義塾大学看護医療学部の開設と同時に、キャンパス裏手にビオトープが創られました。これを看護ビオトープと呼んでいます。
藤沢市の三大谷戸の1つである、「遠藤笹窪谷(健康の森)」の下流部にキャンパスが建てられたので、谷戸とキャンパスの境のバッファーエリアとする目的で当初看護ビオトープは創られました。しかし、しばらく管理の手が入らなくなったことで、当ビオトープは荒廃してしまいました。間伐がされないことによる木々の密生、林床が草丈の高い外来植物 (オオブタクサやセイタカアワダチソウ) で覆われてしまいました。人工的に創られたビオトープは継続したメンテナンスが必要となるのです。
そこで、本プロジェクトは2015年4月より活動を始め、荒廃したビオトープの改善に向けて動いています。具体的には、現状がどのような環境であるのかを評価するための生物調査や外来植物の駆除等の管理作業を行っています。
7年間の活動から、周辺環境も含めておおまかにビオトープを評価できる段階になりました。今後はこの7年間のデータを中心にビオトープの在り方を考える段階に入ります。最終目標としては、笹窪谷を含めた地域の生物多様性の維持・向上に貢献できるようなビオトープづくりを目指しています。そのためには当ビオトープの外来植物を抑制するのはもちろんのこと、間伐を行うことによる適切な樹木管理や谷戸に足りていない止水環境の創出により、ビオトープ全体の湿潤化を図る予定です。我々のプロジェクトではこのような取組を行っています。
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▲看護ビオトープのエリア
出典 国土地理院 航空写真
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▲ビオトープの様子
また、2022年より看護ビオトープに加え総環キャンパスの森林の調査にも取り組んでいます。
SFCができる前の土地には、定期的な人為による伐採や採草、耕作、植林が行われている里山林がありました。そしてSFCが自然豊かでのびのびと学習できる環境を作るため、当時の植生をできるだけ活かしながらその土地本来の自然植生を回復させる「潜在自然植生」の考えに基づいた森林が造成されました。その結果として、常緑広葉樹林の細い木々が密生する暗い森が多くなり、下層植生があまり生えないといった課題も残っています。この森林を守っていくためには、人間による継続的な調査・管理が必要不可欠です。昔の看護ビオトープのように荒廃したビオトープにならないよう、引き続き調査を行っていくことが求められます。
2025年3月、一ノ瀬研究会主導の元、SFCの森林が自然共生サイトに認定されました。自然共生サイトとは、30by30 達成に向け「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定する制度のことです。現在SFCの森林には様々な動植物や絶滅危惧種が生息しているため、今後より生物多様性豊かな環境になっていくような管理計画の策定を目指しています。
このような背景から我々のプロジェクトでは、植物、昆虫、鳥類、哺乳類、水生生物の5つの班に分かれ、キャンパス内にどういった生き物が生息しているのか記録を取っています。また、環境要因の調査としてドローンなどのモニタリングも行っています。
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▲総環キャンパスのの調査範囲
出典 国土地理院 航空写真
プロジェクトの目的
2022年に開催された第15回生物多様性条約締約国会議において、2030年までに陸域と海域の30%を自然保護地として確保する30by30 が合意されました。日本においても 2023年3月に「生物多様性国家戦略」が改定され、生物多様性の損失を止め、好転させるネイチャーポジティブを推進する姿勢を明らかにしています。本プロジェクトではSFC内における森林の管理手法の確立・提言を目標とし、最終的には30by30の実現に寄与できる管理を目指しています。そのため、以下の短期目標の下、活動を進めています。
①看護ビオトープの再生に向け、周辺の状況も含めた生物相の把握のための調査を行う
→周辺に生息する生物の逃避場所や生息地としての機能を果たすため、ビオトープ内また谷戸の現状の把握に努めます。小さな面積では実現できることに限りがあるので、どこを残して、手を加えていくかを決めるための判断材料になります。
②自然共生サイト登録に向けた持続可能な管理体制の構築
→自然共生サイトに登録された場合、最低でも5年おきの継続的な調査を行う必要があります。しかし、大学という特性上2-3年で学生は入れ替わってしまう上に既存手法は調査者の技量に依存する点が大きいことからも、より簡便で持続性のあるモニタリング手法の構築が必要です。
具体的にどのような活動を行っているのかを以下に詳しくまとめています。ぜひご覧ください。
これまでの活動は以下を参照ください。
→活動紹介
これからの活動は以下を参照ください。
→今後の活動
上記のページを見てプロジェクトに興味を持った方はぜひSatoFCプロジェクトへ!特に以下に該当する方、お待ちしております!
生き物が好きな方
SFCおよびその周辺の自然を知りたい方
野外調査やビオトープについて学びたい方
エコロジカルデザインに興味のある方
情報発信が得意な方           等々
生き物が好きという気持ちさえあれば、生き物やビオトープに関する前提知識は問いません。我々もまだまだ知らないことばかりなので、一緒に勉強していきましょう!調査対象地はSFCの敷地内なので、空きコマでもフィールドに出ることが可能です。
生物調査だけでなく、SFC内外への看護ビオトープの周知活動や新たな取り組みもできたらと考えています。生物多様性の保全と他分野を掛け合わせた取り組みの新しいアイディアが浮かんだ方や、情報発信の得意な方も大歓迎です。
近年企業の社会貢献活動の一環として民間がビオトープづくりや保全活動に参加する流れが主流となっています。こういった活動を将来的にやってみたいと思っている方には、本プロジェクトでの活動が役に立つと思います。