ダイナブック
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Kay, A.C. , 1972, "A personal computer for children of all ages" - paper presented at the ACM National Conference, Boston
ダイナミックメディア(メタメディア)機能を備えた「本(ブック)」のようなデバイスという意味で、アラン・ケイが1972年に著わした「A Personal Computer for Children of All Ages」に登場する(なお、このときの表記は商品化を想定した「DynaBook」。後に一般名詞を意識してDynabookと改められる)。
ケイの構想したダイナブックとは、GUIを搭載したA4サイズ程度の片手で持てるような小型のコンピュータで、ミニコンよりはるかに安く、しかしテレビよりはずっと高い500ドル程度(2018年現在の価値だと3000ドル程度)での実現を目指した。文字のほか映像、音声も扱うことができ、それを用いる人間の思考能力を高める存在であるとした。また、構想の時点ですでに有線・無線のネットワーク機能やビットマップディスプレイを想定したマルチフォントに対応することが必須とされ、実際にその後作られた暫定的な実装(後述)にも、今でこそ一般的だが当時としては斬新なマルチウインドウやメニューなど共にそれらの機能が取り入れられている。1977年の「Personal Dynamic Media」という論文に実現されたその詳細が記されている。
こうしてケイらがゼロックスのパロアルト研究所在籍時に「暫定ダイナブック」と称して開発したのが、Smalltalkを GUIベースのオペレーティングシステムに用いて動作させていたAltoや、より小型・可搬でバッテリ駆動も可能だった NoteTaker で、特に前者については 1979年末にこれを見たスティーブ・ジョブズが Lisa 、そしてMacintoshを開発するきっかけとなったとされる。
ダイナブックというと、小型で安価、直感的なUIを持ち、マルチメディアが扱えれば実現可能といった安易な解釈があるが、これらだけでは十分ではない。「A Personal Computer for Children of All Ages」における記述や、その暫定実装においてSmalltalkをオペレーティングシステム (OS) に据えていることからも明らかなように、そのシステムは、エンドユーザーが理解できるシンプルで均一なルール(メッセージング)と要素(オブジェクト)で構成され、このシステム自体をもユーザーが自由な発想で再定義できる柔軟性や可塑性を持ち合わせていることも肝要である。特に最後の条件を完全に満たすOSはまだない。
Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ダイナブック
編集:大竹裕介, 吉澤豊, 金丸紫乃, 杉本達應