ダイナミック・アドバイス
生成AIの力を使って、自分に対して動的に助言をしてもらうこと。あるいはそのような助言。
概要
登場人物は3つ:
エージェント(Agent):生成AIの力を搭載した、自律的に動くプログラム。
コンテキスト(Context):エージェントが正しく動くために与える、自分自身に関する情報。パーソナルなデータから現在の仕事の進捗まで様々。
エンチャント(Enchant):エージェントに追加する知識。ニュアンスとしては、たとえば書籍レベルのまとまった知識をドンと与えてその活用を重視してもらう。
登場人物とのかかわり
あなたはアプリ、プログラム、デバイスなどの形でエージェントを飼っている
あなたのコンテキストはAuto Contextにより、自動で記録・整形されている(エージェントがすぐ利用できる状態になっている) あなたは必要に応じて、エージェントにエンチャントをつけたり外したりする
ダイナミック・アドバイスとは:
エージェントが、
コンテキストを踏まえて、
エンチャントされた知識を重視した形で、
あなたに動的に助言をすること。
例
このサイトのデータをエンチャントする
すると、あなたはこのサイトが扱う数々の概念を使いこなせるようになる。もっと言えば、エージェントがあなたに合わせて、このサイトの概念をわかりやすく提案したり、あるいは小難しい定義すら抜きにしてわかりやすい助言の形で教えてくれたりする
開発秘話
少し長くなりますが、お付き合いくださいsta.icon
ASDは厄介なハンデと言えるでしょう。片足や片腕、あるいは聴力や視力を失った身体障害者を思い浮かべてください。ASDは社会性の障害であり、いわば社会障害者です。障害の名前にふさわしい、凄まじいハンデです
IQが高ければコンピュータのごとく健常者をエミュレート(模倣)することでカバーできますが、稀です。これは片足の身体障害でたとえるなら「片足でも1kmを4分で走れるくらいの脚力体力があります」のようなものです。性能がチート級に強すぎるがゆえにカバーできてしまうのです。これほど極端でなくとも、通常障害者は長い鍛錬を経て、ある種の能力を人並以上に鍛え上げることでカバーします。身体障害であればわかりやすいですし、福祉も整っていますから(悪意に晒されなければ)さほど困難ではありませんが、社会障害はまだ過渡期です
最も厄介な問題の一つが「言われてもわからない」ことです。平たく言えば、ASDは健常者――マジョリティの感性についていけないので、知識として妥当や正解を理解したところで理解はできないのです。強引にたとえるなら、美意識や恥が一切欠如していて「え?鼻毛が出てちゃいけないの?よくわからないけど、じゃあ切るか」「え?鼻ほじってはいけないの?鼻毛は関係ないよ?」「あなたも頬をかきましたよね。鼻の内側をかくのと何が違うのですか?」といった風に本質を理解できない感じです
これもIQが高ければエミュレートでしのげますが、高くないとできないか、すぐにバテてしまいます。たとえばスタイル・パラダイムの文脈(つまり資料を共有する状況)で、その社内において適切な資料のつくりかたや渡し方を十分指導されたとしても、そのとおりに行動できません。あるいは、その労力が高すぎて非現実的です。最初の、任されるタスクが少なく期限がゆるいうちは追いつくかもしれませんが、その先は追いつかず破綻します 抽象的に言えば、ASDはマジョリティが暗黙的に要求する形式に追いつけない、との構図になっています。ASD自身に、その形式を作る能力、もっと言えば感性や感覚がないのです。処理する器官がないと言ってもいい。無理ゲーなのです。ですので、ASDは、形式にはあまり従わず、我流で、とにかく数を撃つことでまがいなりにも相手をしてもらうという無理難題で勝負しなければなりません。無論、こんな無理ゲーでまともに生きていくことはほぼ不可能であり、それゆえ「ルールに従うのが得意」「全部厳密に示してもらえればいけるよ」といった働き方に終始しがちです
この構図を解決するために、私は「ASD自身が形式をつくるのをやめればいい」と考えました。Mechanical Styleはまさにそうで、生成AIにつくらせて、それをそのまま提出すればいいじゃんというわけです
ですが、まだ足りません。資料をつくればはい終わり、絶対必ず見てもらえます、というわけではないからです。見てもらうためには多くの人付き合いや政治を必要とします。Whoismも手強いです。ASDは社会的障害であり、これらの要領ももちろんありません(*1)。ですので、そういった社会的活動も生成AIにやってもらう必要があります *1 運が良ければ変人枠として飼ってもらえます。あるいは物好きな人に好かれてパートナーを得ることができます。が、私の経験上あるいは観測上、それができるのはIQの高いASDだけだと思います。物好きな人は、人間らしからぬ「エミュレート星人」に惹かれるのです
そのためには何が必要かと考えて、動的に助言できればいい、と導きました。そのための登場人物としてエージェント、コンテキスト、エンチャントの3つに整理しました。-ト で揃えています。