岩井克人「不均衡動學の理論」1987
https://gyazo.com/2d2429bb5e029d1e7184afbd7d311882
https://gyazo.com/2c0299839f11b4ee89ce4a225d57cd33
新古典派の前提
個人「合理性」卽社會「合理性」といふこの基本原理が、實はすべての價格調整が市場のせり人によって中央集權的になされてゐるといふ暗默の假定、いや虛構に全面的に依存してゐる
未來から逆算される囚人のジレンマを效率的にする若干の個人的「非合理性」= 公平無私に市場全體の需給の乖離に應じて價格を調整してゐる市場せり人
總需要 = 總供給
知識獲得と豫想形成の均衡
合理的期待 (rational expectation)
異時點の流動性の最適化
不均衡動學
企業が價格や賃金を伸縮的に變更しうる經濟においては、何らかの理由で財全體に對する總需要と總供給が乖離すると、企業閒の意志決定の相互干涉が必然的に各企業の市場狀況についての豫想を誤らせ、價格および賃金が累積的に均衡から離反していく動態的 process を發動させる
伸縮的な價格および賃金の下では、貨幣經濟はたえず累積的 deflation あるいは inflation の危機にさらされた不安定な性格をもってゐる
價格が現實に市場に參加してゐる企業によって分權的に決定されてゐるといふ理論的枠組みを組み立てると、その中では、個人「合理性」の全面的な展開は逆に社會「非合理性」に多くの場合歸結する
市場經濟がなんらかの意味で安定性をたもってゐるとすれば、それは價格が全面的には伸縮的ではなく、逆にさまざまな經濟外的な制度の存在によって、すくなくとも一部の市場において人々が合理的な行動をとることができず、價格の圓滑な變動が阻礙されてゐるから
われわれの生きてゐる經濟が、ハイパー・inflation 期や大恐慌時代をのぞいてそれほど不安定な樣相を帶びてゐないのは、勞働市場で貨幣賃金が硬直的であるがゆえに累積的 deflation や inflation の發動がさまたげられてゐるから
社會「合理性」を一定程度確保するためには個人「合理性」が全面的には展開しないやうな何らかの經濟「外」的要因の存在が必要となる
價格と賃金の下方硬直性をその特色のひとつとする現代の資本主義經濟においては、總需要の不足がもたらす累積的 deflation 過程は、價格 (および賃金) の下落 (あるいは長期趨勢からの下方乖離) とはほとんど結びつかず、もっぱら、所得と雇傭の縮小を招くだけに終はる
總需要と總供給が乖離してゐるかぎり、すべての財・service の需要と供給を同時に等しくさせる相對價格體系は理論上存在しえない
安定化要因
ピグー效果
inflation が貨幣および他の名目資產の實質價値を減らすことによって、消費者の購買意欲を直接的に減退させる傾向がある
ケインズ效果
流動性の罠 (liquidity trap) に陥ってをらず、投資の利子彈力性が無視できない經濟では、inflation による貨幣の實質價値の目減りが、人々の流動性選好の働きによって金融市場での利子率の上昇を招き、ひいては企業家の投資意欲の減退をもたらす 不安定化要因
純粹なる內部貨幣 (inside money) 經濟
金融機關が inflation に比例する信用膨張を許してゐる
累積的な inflation が續いてゐる狀況では、消費者は將來のいっそうの物價高を恐れ、財の購入時期をなるべく繰り上げようとするであろうし、企業家は將來いっそうの高値に期待を寄せて、在庫の積み上げや投資の擴大を圖るであろう。
Say の法則が搔き亂された貨幣經濟においては、財・service どうしの代替關係は、けっして滿たされるはずのない相對價格の無駄な調整を促し、累積的 inflation を激化させる不安定化作用をもつ。 https://gyazo.com/d8eeadc03a2403775e02410cdbf17990
投機
自分と同じやうに市場を眺め、自分と同じやうに合理的に思考するほかの投機家が、將來モノ不足になると豫想してゐるのかモノ餘りになると豫想してゐるのかを豫想し、それに先驅けて賣り買ひすることに全知全能を集中する
それぞれの投機家がおたがひの合理性を信じてゐればゐるほど、さらに高段階の豫想の豫想……の豫想をしていく必要がうまれてくる
そこに成立する價格は、實際のモノの過不足の狀態から無限級數的に乖離する傾向をしめし、究極的には、たんにすべての投機家がそれを市場價格として豫想してゐるからそれが市場價格として成立するといふだけになってしまふ。
分業
生產者は、將來どのやうな價格でモノが賣れるのかを豫想して生產に從事しなければならず
消費者は、將來どのやうな價格でモノが買へるのかを豫想して消費を計劃しなければならない
市場經濟のなかで生きてゐる人閒は、その意味で、意識するにせよしないにせよ、すべて市場で投機家としてふるなはざるをえない
金融市場
時閒を節約することや risk を囘避することやそれらのさまざまな組み合はせを有価證券といふかたちで商品化したものを一般に金融商品とよび、その金融商品を賣り買ひしてゐる市場のことを金融市場とよぶ
專門的な投機家とは、じぶんの時閒を賣り、他人の risk を買ふことを商賣にしてゐる人閒
金融市場とは、實體的な經濟活動が必然的にふくんでしまふ投機的要素を切り離して商品化し、それを實際の生產者や消費者から專門的な投機家へと轉化していく仕組みである。その圓滑な機能のためには、專門的な投機家の參加が大前提となってゐる
時閒の節約や risk の囘避を商品として賣り買ひする機會をつくることによって、實體的な經濟活動の擴大にたちはだかる非效率性を取り除いてくれる。
金融市場といふ市場が、時閒の犠牲や risk の負擔をみずからひきうけてくれる專門的な投機家が多數活動して、はじめて成立する市場
專門的な投機家がおたがひ同士で賣買をはじめると、それはケインズの「美人コンテスト」の原理によって支配される場となってしまふのである。その結果は、價格の亂高下であり、市場の不安定性
金融市場の媒介によって生產活動や消費活動が效率化すればするほど、市場における價格の不安定性が增していく
金融派生 (derivative) 商品
そこでの價格や利子の亂高下が、あらたな形の時閒の犠牲や risk の負擔をまねいてしまふ
このやうな時閒を節約したり risk を囘避することをさらに商品化するといふ可能性をあらたに生みだす
デリバティブのデリバティブ。デリバティブのデリバティブのデリバティブ
これらのデリバティブ市場においては、そこに參加する人閒はほぼ全面的に專門的投機家に限られてしまふ
貨幣からの遁走 = ハイパー・inflation
←→貨幣そのものを欲する = 恐慌
バブルの崩壞
負債の返濟自體と返濟壓は不景氣の原因か結果か?
君主であること
君主はほかの人民のやうに振る舞ってはならない
中央銀行
貨幣價値の番人 + 最後の貸し手
ほかの國民國家の存在を前提とし、それとの對抗意識を原動力として、運命共同體としての國民といふ觀念のもとに作りあげられた文化的政治的經濟的な統一體である國民國家の中で、國民全體にたいする奉仕といふまさに國民國家の存在理由に根ざした目的を盾に、国內のさまざまな政治的壓力から一定の獨立性を保つことができた
貨幣發行益
貨幣は豫想の無限の連鎖の純粹形態
貨幣が貨幣であるかぎり、その貨幣としての價値はその生產費用を必然的に上囘る。貨幣の貨幣としての價値がその生產費用を必然的に上囘る。貨幣の貨幣としての價値がその生產費用を上囘るかぎり、貨幣の供給は必然的に seigniorage をうみだす。貨幣の供給が seigniorage をうみだすかぎり、貨幣の供給者は貨幣を過剩に供給する誘惑にさらされる。そして、貨幣がじっさいに過剩に供給されると、貨幣が貨幣でなくなってしまふハイパー・inflation がひきおこされてしまふ
基軸通貨
グローバル中央銀行