神学と心理学が根ざす人間存在
そこではじめにフロムは宗教とはなにか、その諸相を暴くために宗教の立脚する人間の分析をはじめる。そしてフロムは序論にて「本書の内容は、倫理に関する心理学を問題にした、『人間における自由』(Man for Himself)に展開された思想につづくものであると了解されたい。倫理と宗教とは緊密に関連しあっており、したがって重複する部分もでてくる。しかし、『人間における自由』においては、重点はまったく倫理におかれたのに対して、本書では、宗教の問題に焦点をおこうとした」と論じたように、実存分析はすでに前傾書にして成したとし、引用から本章を始める。そしてそれは人間本性の二分性と、それを克服=調和しようと試みる運動である。