ポジションを取る
【山口】先ほどの、世の中で起こっていることについても、ただなんとなく情報に接しているのと、自分が当事者になったつもりで、ある種関心を払って見るのとは、やっぱり違いますよね。松本さんは、好奇心を持つのはすごく大事だということもおっしゃっています。ようは、自分の予想と違うふうになる、あるいは想定外というときに、そこにある種の学習が起こるということだと思うんですね。以前に元マイクロソフト社長の成毛眞さんとの対談のなかで、金融の極意は? というのを成毛さんが聞いて、松本さんがポジションを取ることと言っていたことがあるんですね。
【松本】そんなこと言いましたっけ?(笑)
【山口】そうすると、さきほどのコンサルティング業界の話で、若い子で、すごく優秀なのに伸びない子というのがいる。実際コンサルティング会社がアセット(経営資源)を持つわけではないんですが、結論はAなの、Bなの聞くと、情報が全然ない状態でもAですって言う子がいるんです。一方で、まだなんとも言えません、あと1週間くださいと言う子がいる。で、1週間経って聞くと、大体まだわかりませんと答える。そうではなく、とにかくその時点で持っている情報でもってAかBか決めることだと思うんですね。確率で、ベイズ確率ってありますよね。 【松本】ありますね。
【山口】ようは、コインを3回投げて、3回表が出た。で、4回目に投げたときにどうかといえば、表が出る確率と裏が出る確率は同じなわけです。ですから、その時点でAかBかというのは決めてしまって、プラスの情報がきたときに、Aのほうがどうも高そうだとなったらそれはAに変えればいいだけの話で、その瞬間、その瞬間での自分の結論を出しなさいと。これ、ポジションをちゃんと取りなさいということと同じなんですね。お話をお伺いしていて、松本さんの場合、世の中に対してもそうだし、自分のお仕事に対しても、きっちりポジションを取るということをしている。だからこそ、いろいろな関心が出てくるし、ある情報が出てきたときに、それは自分が思っている、取っているポジションに対しての反証材料なので、ポジションをまた改めようということができる。そうすることで、実体験以上の経験がいろいろできると。
初期段階でもまずは自分の回答を出す。得た情報によって、走りながら軌道修正する。
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