オープンソース
それはNDコードがトヨタグループ以外には普及しなかったことから学んだことだった。かんばん方式の良さを引き出すために開発されたNDコードは、特許を取得し、特許権を行使し、利用者からはライセンス料を受け取る道を選んだ。その結果、NDコードは企業グループや業界を超えて普及することはなかった。 そうした過去の事例を参考に、デンソーはQRコードを特許の権利行使をせず、無料での利用を認めるパブリックドメインとし、標準化することを宣言した。NDコードでの反省と自動認識業界で標準化するためには、パブリックドメインを宣言することが条件だったことから、QRコードではコードの仕様を公開し、特許権を行使しない方針を発表したのだ。 今の言葉でいえば、オープンソース化したということだ。オープンソースという用語が一九九八年、クリスティン・ピーターソンによって提案されたことから考えると、オープンソースの展開とほぼ同時期、あるいは先んじていた動きだったといえるかもしれない。 デンソーはQRコードのユーザーを世界的に増やすことを念頭に、同コードが国際自動認識工業会(AIMインターナショナル)規格や国際標準化機構(ISO)といった国際規格に制定される努力も怠らなかった。QRコードの利用者増、認知度向上、利用者による用途の開発、そして利用実績の蓄積。こうした標準化から普及に向けた展開を期待したのだ。そして、その期待は現実のものとなる。 実際に、デンソーにとって思いもよらなかった利用法がQRコードの普及を加速した。