『市子』
原作:戸田彬弘
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普段は、台本に書かれている表現をちゃんとできるだろうかという緊張感や、「こういう表現になるのかな」とイメージが湧いたものを再現しようとするなど、演じ手としての余計な欲が出てきてしまう感覚に襲われることがあります。毎度、そういった欲をそぎ落としたい気持ちとのせめぎ合いなのですが、この作品ではまさにそんなフィルターが外れた瞬間に出会うことができました。
ー 終盤のお祭りのシーンもそうですが、本作で、市子が自分の名前を名乗る時の嬉しそうな瞬間がとても印象的でした。そこでぼくが感じたのは、自分の名前はアイデンティティだということです。杉咲さん自身は、名前というものをどう考えているのでしょうか。 個人間で名が付けられ、他者に共有されていくものとして、その行為に尊さを感じるからこそ、私にとっては心に刻まれたお守りのような存在です。そして社会においては、他者に自分の存在を表すひとつの重要なアイデンティティという認識があるので、通称名なども含めたそれぞれの望みを尊重したい気持ちがあります。 他者の名前を誤って認識したり、呼んでしまうことは避けたいです。 自分とは違う環境を生きる方々に対して、人は自分の物差しでいろんなことを思い、口にすることがあると思います。たとえば「大変そう」とか「かわいそう」とか、そういった言葉で他者を定義して形容しがちだなと。けれど、劇中、(中村ゆり演じる、市子の母)なつみのセリフで「幸せな時期もあった」とあるように、どんな環境を生きていたとしても、外側にいる自分たちには決してわからないことがあるということを、改めて考えさせられましたし、その上でどれだけ他者と関わっていけるのだろうということを突きつけられるような気持ちになりました。
https://youtu.be/fCGoFX_dwJI?si=TMOpl3hVyPIcHx_T
https://youtu.be/4WjlwLUnbw0?si=FCKKCPfV_GMv9vDx
社会問題