『フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義』
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6類 産業
第一章
2025年までに700兆円規模に。
フードテック(FoodTech)がどれほど盛り上がっているか、2019年の総投資額は150億ドルに達し、2014年のおよそ5倍。
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Amazonのホールフーズ買収も大型案件として話題になった。
Amazon × ホールフーズ
ビル・ゲイツも培養肉スタートアップなど、「未来のプロテイン」に対して積極的に投資をしている。
19年秋、米国で開催された小規模なカンファレンスで、ショッキングな試算結果がプレゼンテーションに映し出された。世界のフードシステムの年間市場価値は、10兆ドル(約1077兆円)。それに対して、フードシステム自体が引き起こしている健康や環境、経済へのマイナスの影響が12兆ドル(約1292兆円)と、生み出す付加価値を大きく上回るというのだ(図14)。これは、ざっくり中国のGDP(国内総生産)に迫る規模である。つまり、我々現代の人間は、食べれば食べるほど体の外も内も傷ついていくという状態だ。
SDGsを戦略の中核に捉えることが、企業価値の向上にも繋がっていく。
Food for ウェルビーイング
人々が食にどのような価値を求めているのか。
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リラックス、健康、楽しみたい、安心、季節を感じる、好奇心、感謝を表す、懐かしい気持ち、役に立ちたい、新しいことを学びたい、歴史・伝統、ステータス、環境への貢献。などなど。
日本よりも、アメリカ・イタリアの方が、ロングテールの「テール」が厚い。
「自己表現したい」「周りと繋がりたい」が20%
求める価値に多様性がある。nagata.icon
一方、日本茶のIoTティーポット「Teplo(テプロ)」を開発しているのは、Load&Road(ロード・アンド・ロード)。同社CEOの河野辺和典氏は、これまで数百年にもわたって「急須」が進化しておらず、日本の茶道や多くのお茶文化が大切にしてきた、お茶をいれる時間そのものの豊かさが失われつつあることに気づき、テプロを開発したという。テプロは、本体下部のセンサーを指先で触ると、お茶をいれる人の心拍数や体温が計測され、その他、周囲の光や温湿度も検知して、使用する茶葉に合わせて抽出時間や温度を自動で調節する。これは茶道などでお茶をたてるときに、提供する人の体調や気分、季節などを気使うのと同じ要素をテクノロジーで再現しているともいえる。室温や量によって異なるが、テプロでのお茶の抽出には数分かかる。お茶はコンビニでも自動販売機でも気軽に手に入る時代だが、テプロが実現しているのは、「お茶を急須からいれる時間自体を楽しむ」という体験である。テクノロジーによって生み出されたこの豊かな時間を楽しみ、そして自分の体調を整えてくれるお茶を味わえるのが、ユニークな組み合わせと言えるだろう。
これまでの家電製品は人の介在をできる限り排除することを目的としていた。冷蔵庫は電源を入れれば、すぐに冷やしたり冷凍したりできる。エアコンも洗濯機もスイッチを押せば動く。誰がそのスイッチを押しても得られる効果は同じだ。しかし、料理はレシピの決定から始まって、食材調達、調理、食事、後片付けまで、実にアナログだらけのプロセスである。影響を与える要素が多すぎて、人によって出来上がりは大きく異なる。さらに、そんなプロセス自体が楽しいと感じる人がたくさんいて、必ずしも全自動化が望まれているわけでもない。本質的に楽しむ行為であり、効率とは違う。食材を含めて、いろんな思いや価値観が交じる。京都府立大学京都和食文化研究センターの佐藤洋一郎特別専任教授によれば、料理とは芸術、学術、技術の3種の術を統合して成り立つものであるという。それほど奥の深い活動だ。
第二章
服部氏はスナックミーを「コンテンツビジネスと位置付けている」という。スナックミーの特徴は、届いた菓子を食べた後にアプリ上でフィードバックを送る機能があり、嫌いな食材や気に入った菓子を登録しておくと、それに応じた菓子が選別されて届くことにある。これは、さながら菓子業界のネットフリックスのようなものだ。ネットフリックスは、どんなジャンルの映画が好きか嫌いか、映画を見た記録自体からお薦めの映画を提示する。スナックミーでは、そんな要領で菓子が送られてくる。これも、デジタルビジネスに明るいからこその発想だろう。
Netflix
Food Inovation Map Ver2.0
フードテック起点でみたトレンド
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生活者がモノを買う段階まではGAFAも見えているかもしれない。だが、その食材を使って何を作ったのか、「家の中」までは、まだ正確には見えてなかった。その意味でキッチンを知ることは、生活者とメーカーたちが再びつながる強力な接点になり得る。キッチンにある調理家電を開発するスタートアップが急増したのは偶然ではなく、論理的な帰着。家電製品でデータを吸い上げることで、生活者の行動がより理解できるようになるのだ。
GAFA
第三章
フードデザート
D2C
今まで飲食店は食材、シェフ、レシピ、調理、場所、そして顧客という「機能」が、1カ所に集まり「バンドル」されてはじめて成立していたサービスだった。これが間と間をつなぐプラットフォームができることによって解体されるということだ。フードデリバリーのプラットフォームによっては、それぞれのレストランのメニューを分解し、例えばスープはレストランAから、ハンバーガーはレストランBから、デザートはレストランCから、といった注文方法も可能だ。それこそ、私たちはアマゾンで買い物する際、実はそういう買い方をしている。そんな世界が来たとき、「レストラン」とは何を意味するのか。
第四章
インポッシブルフーズ
同社の取り組みで興味深いのが、脳科学を用いて「人間は何を見て肉と思うのか?」を解明しようしていることだ。例えば、最初は赤くて加熱とともに茶色になるプロセスを見せる視覚効果や、様々なフレーバーが混じり合った嗅覚情報によって、人間は今見えているものが「肉」であると認知する。この視覚効果や人間が感じるフレーバーを実現させるために重要なのが、「ヘム」という化合物で、これがインポッシブルフーズの植物性代替肉を「肉」たらしめているコア中のコア技術だ。
謎肉も、培養ステーキ肉の種類のひとつ。
スノーピアサー(映画)に出てくる、黒い化学食品をなんとなく思い浮かべてしまうnagata.icon
プラントベースドが代用品と言われる時代は終わって、本流になるのだと思います。将来的に食べ物がなくなっていく中で、我々が植物性油脂や大豆プロテインの技術を持っているという事実は、そのままサステナブルフーズにつながります。ここで重要なのは、単純に肉の代わりが持続可能な形でできましたというだけで終わらせないこと。そこに留まっていては、人類は救えません。やはり未来に価値のある食べ物として、「おいしいもの」をどうやって創造していくのか、生活者のニーズに即したところからフードテックにつなげる必要がある。
第五章
キッチンOS
レシピ進化の3段階
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食品関連の企業が最も注意を払うべきは、「レシピと食材と家電がシームレスにつながる」というユーザー体験が徐々に浸透することである。これまではレシピの検索、小売店での食材の購入、調理家電・器具を使った料理を包括し、一気通貫で提供するサービスは存在しなかった。それが今後は、レシピを決めたらそこからネット通販につながって食材を購入し、そのレシピに連動して動く調理家電が多数生まれる。
19年ごろにはグーグルアシスタントも広まり、新しい連携プラットフォームとして一気に拡大した。つまり、わざわざ家電同士をつながなくても、音声AIを搭載したスマートスピーカーが制御のハブとして台頭してきたのだ。この音声による家電制御が最も威力を発揮しそうな場所がキッチンだ。調理で手がふさがっていても、声でちょっとした家電操作が可能になるのは、生活者にとって魅力がある。キッチンに君臨していたのは家電だったはずなのに、いつのまにか生活者データがアマゾンやグーグルのスマートスピーカーに蓄積していく状態にもなってきた。家電メーカーとしては少しでも生活者との接点を増やそうと、ソフトウエア化されたレシピというキラーコンテンツを持つキッチンOSのスタートアップのスピード感を借り、家電のIoT化を加速化させたいというわけだ。
Google アシスタント
フルスタックでのサービス展開を狙うプレーヤー達の立ち位置
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キッチンOSのドロップCEO、BenHarris(ベン・ハリス)氏は、米国で19年に開催されたSKSで、「キッチンOSの役割は、ユーザーの料理の知識を最大限高めることだ」と述べている。これは非常に大事な視点で、家電やアプリだけが賢くなるのではなく、自分自身が食の知識、何が自身の健康にいいのかといった知恵を持つことが重要だ。サイドシェフCEOのケビン・ユー氏も、「キッチンOSはユーザーとengage(深い結び付き)をつくれなければ意味がない」と話している。すべて自動にするのでも、一方的なレシピの押し付けでもないところが大切だ。
キッチンOSと連携する調理家電がこれから追求すべきテクノロジーは、ユーザー自身がいかに料理という行為に価値を感じるかという観点が重要になってくる。例えば、「手作業でゆっくり料理をする体験」「パンを作る新しいスキルを習得する体験」など、料理をより価値ある経験になるよう演出できることも、これからのキッチンOSと連携家電には重要な要素なのではないだろうか。
日本だとクックパッドがリードしているか。
第六章
超・個別最適化
カスタマイゼーションは基本、顧客が直接仕様などを指示するものだが、パーソナライゼーションは顧客による直接のインプットがなくても、行動パターンや好みなどのデータの意味合いをとることで、供給側が顧客に対し、おそらくこれが一番いいと提案して成り立つものである。顧客がほしいものがよく分かっている場合には、顧客からのオーダーを待てばいい。しかし、顧客は自分では本当に何がほしいか分からない時代、顧客を理解し、先回りしてその顧客が求めていることを実現できるようなソリューションを提案できることが必須となってくる。
医食同源(food as medicine)
小売りもパーソナライズ化
英国のスタートアップDNANudge(ディーエヌエーナッジ)は、DNA検査結果を基に、食品スーパーの来店客が最適な商品を選んで購入できるシステムを開発した。導入店舗を訪れた来店客はまず、DNA検査を行う。すると約1時間後に結果が分かり、そのデータが読み込まれたリストバンドを受け取る。商品のバーコードにそのリストバンドをかざすと、自身のDNAにマッチしていれば緑、危険なものが入っていたら赤のランプで表示される。こうすると、一見同じようなチョコレート菓子でも、実はどのブランドのものが自身の体質に合っているのか、合っていないのかが分かるようになる。これまではラベルに書かれた表示を見たり、パッケージに書かれた「低脂肪」「低糖質」などの文言で判断したりしていたものが、かなり精緻な判断ができるようになる。
そこでキャンイートは、かなり細かくユーザーの食事制限などの情報を取得するとともに、どのアレルギーであれば、どういった対策をとらないといけないのか丁寧に指導している。結婚式などのイベント事業者と組み、この情報が確実に厨房に届くようにしており、企業の社食サービスなどにも提供しているという。生活者側も、告知する必要があるアレルギー情報をもらさず伝えることができて安全だ。こうしたアレルギー情報が一元化されたプラットフォームは、食事サービス提供者がパーソナライズドサービスを提供するインプットになるだけではなく、パーソナライズドフードの製造・販売を検討している食品メーカー、家電メーカーなどと連携すれば、よりフルスタックなサービスが提供できるはずだ。生活者が必要なのは、アレルギー情報の可視化ではなく、それを踏まえた食事の実現である。
ネットフリックスは19年からAIを使った自動映画トレイラー(予告編)生成を始めようとしている。同じ映画でも複数のトレイラーが作られ、アクション映画を好む人向け、ロマンスを求める人向けといった具合にトレイラーがパーソナライズされていく。見る映画自体は同じものでも、プロモーション方法を変えるというわけだ。
3Dフードプリンター
フードロボティクス
Netflix
ガストロノミー
第七章
昨今の人手不足のため、アルバイトは貴重な戦力となっており、欠員が出るともはや店舗は回らないのだ。飲食店で働く全従業員のうち82%が非正規雇用者である。飲食店の運営にはアルバイトスタッフは必要不可欠であり、その担う役割は大きい。つまり、アルバイトの人件費は変動費ではなく、「固定費化」しており、外食産業はコスト構造の弾力性がなくなっていた。人手不足を起因に、産業構造がいつのまにか変わっていたのが実態だ。
米国も以前から外食産業の人手不足は深刻だ。それに対して、米国のウーバーイーツやDoordash(ドアダッシュ)といったデリバリープラットフォームが増え、ギグワーカー①がそれを支える構造が生まれてきた。そして、ここ数年は単なる配送の効率化にとどまらず、新しい価値の創出までをも狙ったレストランテックや、新しい事業モデルにも対応できる〝レジリエンス(回復力)〟の高いレストランモデルが構築されつつある。
UberEats
DoorDash
ギグワーク
また、自販機3・0は、オーダー、調理、提供、決済のすべてに人手を介さないのが大きな特徴だ。提供メニューの煩雑なカスタマイズやパーソナライズへの対応も、完全自動のフードロボットならば簡単に対応できる。例えば、スターバックスやタリーズのカウンターでのオーダーを思い出してほしい。顧客は様々なカスタマイズができることが分かっていても、多くのオプションから選ぶ煩雑さや、細かな指定をすることへの遠慮、気恥ずかしさから、ついシンプルな、いつもと同じオーダーをしがちだ。
しかし、自販機3・0の場合、多くがスマートフォンや店頭のタブレットから注文する形式のため、注文途中の画面で、おびただしい選択肢の中から分かりやすくメニューのカスタマイズができる。サラダであれば野菜の種類や無数のトッピング、コーヒーであればフレーバー付けやミルクの種類など、一般の店舗なら面倒で注文されないディープなオプションまでも訴求できるので、客単価が上がる効果も期待できる。
かつてのシェフは、自らの世界に集中し、目指す食の形を探求する専門職というイメージがあった。ところが、現在は従来のシェフの枠組みを超えて、エンターテインメントや医療、スタートアップなどの要素を加味し、新しい価値を創造するシェフが登場している。そうした活動をしているシェフたちは、「コネクテッドシェフ」と呼ばれる。
彼らは、料理を作る職人であると同時に発信力があり、料理以外のジャンルの専門性もある。SNSを駆使して顧客とダイレクトにつながってファンを増やし、新たな活動の場をつくり出すこともできる。また、彼らはフードテックに対して柔軟かつ幅広い知識を持ち、スタートアップ企業の料理アドバイザーとしてヘッドハンティングされるなど、活躍の幅を広げている。
シェフドクター
第八章
新型コロナ禍の影響もさることながら、日本の人口動態に伴い、今後日本の〝胃袋〟は小さくなるという。農林水産政策研究所の調査によると、キロカロリーで見た食料消費総量は減少に向かうと予測されている。この小さくなりゆく胃袋に向かって、今、数多くの食品小売りがひしめき合っている。こうした〝不都合〟な予測を見ながらも、日本の食品小売りにおいては生き残りをかけて、新規出店を増やすなど、とにかく市場のパイを奪い合ってきた。食品スーパーやコンビニだけではなく、ドラッグストア、ディスカウンターなど、これまで食品・生鮮品を取り扱わなかったプレーヤーが、食領域の集客力(目的地化する力の強さ)に目を付けて、こぞって食料品の取り扱いを増やしていく中、結果として食品取扱店の出店過多な状況がここ数十年続き、〝同質化〟を招いている。もはや品ぞろえと価格では、ほとんど差別化ができず、業界全体として成長が見いだせないでいる。
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図の中央に示したように、今、食品小売りが解くべき最も重要な課題としては、集客力を高めること、すなわち、生活者にとって店舗が「目的地」となるようにすることだ。そのために、どのようにフードテックを活用していけるのか、「①新たな生活者接点の構築」「②ウェルビーイングを生む体験の創造」「③調達方法の革新」という3つの切り口から考えていきたい。
第5章で説明したキッチンOSも、食品小売りとの結びつきを強めている。レシピサイトが基本となっている彼らは、そのレシピで必要とされる食材を買いやすくする工夫をしている。代表的な事例は、米Innit(イニット)だ。イニットは17年に米Shopwell(ショップウェル)を買収。ショップウェルは、イニット上でレシピが選択されてショッピングリストが作成された段階で、どのプロダクトを選んだらよいかを、ユーザーの栄養プロフィル(年齢、性別、アレルギー、個食主義情報などを基に作成されたもの)から判断して推薦する。例えば、レシピからケチャップが必要と分かったときに、どのブランドのケチャップであれば自分の体にも哲学にも合っているのかをスコアリングして提案する。ブランドAのものがよいのか、ブランドBのほうがよいのかを、価格や感覚で選ぶのではなく、自分に合ったものを選ぼうという趣旨のサービスだ。
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