退化
生物の全体の体制や器官の単純化、縮小、消失をいう。 一般には系統発生(進化)の過程での退行的変化について用いられる。 この場合、退化も進化の一環として理解すべきであるとの観点から、退行的進化ということも多い。 個体発生の過程での退行的変化、たとえばオタマジャクシからカエルへの変態に際して尾が消失することなどについても退化ということばを用いることがある。 進化における退化の例としては、体内寄生虫の消化器官や感覚器官の退化、洞穴など暗黒条件で暮らす動物の目や体表色素の退化などがよく知られている。これらの例でわかるように、一般に、新しい環境のもとで不用になった器官や、それが存在するとかえって不都合になる器官について退化がみられる。 しかし、暗黒条件下で目は不用に違いないが、かならずしもあって不都合というわけではなく、退行的進化の説明は、体制の複雑化の説明より困難なことが多い。
ただ、生物が自分自身をつくりあげるために使うことのできる物質やエネルギーに限度があれば、その範囲内で効率のよい体をつくる必要があり、不用な器官を残しておくことは不利になるということがあるかもしれない。
寄生虫で生殖器官が異常に発達していることも、消化器官などの退化によって可能なのだともいえる。
全体としての適応を高めるために、体の小部分の退化がおこるということも多くみられる。 進化に伴いウマの足指が減少することは一つの例である。これは、指としてみれば明らかに退化であるが、肢全体としてみれば、走ることにより適応したものになっている。
部分的な退化はむしろ普通であって、それなくしては、全体としての適応的進化もありえないとさえいえよう。