自己評価維持モデル
人が自己評価の維持・高揚に強く動機づけられていることを前提(自己高揚動機)とし、社会的比較のプロセスを包括的に説明したモデル 他者の存在は自己評価に重要な影響を与えるが、その影響は、比較過程と反映過程という2つの過程のいずれかに基づく
比較過程: 他者の遂行レベル(成績など)と自分自身の遂行レベルとを比較すること(社会的比較)により、自己評価を上下させる過程 反映過程: 他者の遂行を自己と結びつけ、同一視することによって、自己評価を上下させる過程 このうちどちらの過程が働くかは、3つの要因によって変わってくる
他者と自己の心理的距離
課題や活動の自己関連性の程度
自己と他者の相対的な遂行レベルの認知
例
他者の遂行レベル>自己の遂行レベル
自己関連性が高いとき
比較過程:自己評価が低下しないよう、他者との心理的距離を広げると、このモデルは予測する
自己関連性が低いとき
反映過程:心理的距離を狭める
もともと心理的距離が狭く、それ以上に距離を広げることができない場合(比較対象がきょうだいの場合など)
自己関連性が高い課題のときには、比較過程が働くため、自己の遂行を上昇させるか、他者の遂行レベルを低下させることで、自己評価を維持しようとすると、自己評価維持モデルは予測する
e.g. 兄弟で水泳をしていて、弟の方がタイムが早い場合、弟のタイムを抜くよう頑張ったり、弟の練習を妨害するなどするかもしれない
自己関連性が低い課題の場合は、反映過程が働くため、自己の遂行レベルを低下させたり、他者の遂行レベルを上昇させたりすることで、自己評価を高めることが予測される
e.g. 努力をやめて弟が良いタイムを出せるよう協力することで、素晴らしい選手の兄として高い自己評価を維持する
同じく心理的距離が狭い場合、他者の遂行が優れていて自己の関連性を下げる、他者の遂行が劣っていれば関連性を上げるといった方略も考えられる
e.g. 兄は早々に水泳に見切りをつけ、水泳は自分にとって重要な活動ではないと思い込む
e.g. 弟よりも自分のほうが勝っているなら、それを自分にとって重要な活動だと自己関連性を強く認識することで、自己評価を上げることもできる