援助行動
向社会的行動の典型
少なくとも表面的には、外的な報酬や見返りを期待せず、自発的に人を助ける行動
援助行動が利他的な動機に基づくものなのか、利己的な動機に基づくものなのかについては根深い議論がある
緊急事態で援助行動が発動されるまでには、様々な要因が関与する
ラタネとダーリー(Latané & Darley, 1970)は、次のような意思決定プロセスとしてモデル化している
https://gyazo.com/fa3fd5892ab07fd66ba8136f9457b759
緊急事態に注意を向ける気づきの段階
緊急事態が発生したとき、そこに居合わせた人が何か深刻なことが起こっていることに気づくためには、注意を向けなければならない
人の注意は選択的であり、自分を取り巻くあらゆる事象に常に注意を向けているわけではない(選択的注意)
しかし、傍観者が大勢いると、注意が拡散し、緊急事態が発生していること自体に気づかないことがある
緊急事態であると判断する段階
何かが起きていることに気づき注意を向けたとしても、それが援助の必要な緊急事態であると判断されなければ、援助行動は起きない
集合的無知が起きるような状況では、本来は緊急を要するような状況であっても緊急事態だと認識されないことがある
個人的責任の度合いが決定される段階
目の前の状況が緊急事態だと判断したとしても、その事態をどの程度、自分に責任のある事態と認識するかによって、援助という介入行動が起きるかどうかは変わる
傍観者が大勢いるような状況では、責任の分散が起きやすいため、誰もが自分には責任がないと感じてしまう
介入様式(援助の方法)が決定される段階
自分には援助すべき責任があると自覚した場合には、今度はどのような介入ができるかを考えなければならない
介入の手段を知らなければ、あるいは必要な介入行動を思いつかなければ、援助行動は生じない
援助すべきと思っても、自分に何ができるかがわからない、あるいは自分ではどうすることもできないと思えば、介入には至らないということ
介入を決断し、実行する段階
この段階に至れば、多くの場合、援助行動の実行が選択されるが、評価懸念が生じたり、コストに見合うだけの利益がないといった推測が働くと、抑制されることもある
上記のプロセスは、単方向のものではなく、現実には、各段階を行きつ戻りつしながら、援助行動を実行するか否かが決断される
このように援助行動は多くの意思決定段階から成り立っているため、緊急時の援助行動を促進するには、肯定的決断を阻む要因をいかに取り除くかが鍵となる