同調
アッシュ(Solomon Asch: 1907-1996)は2枚のカードから同じ線分の長さの線を選ぶという課題を実施(Asch, 1955)
単独では正答率99%以上という極めて簡単な問題だったのにもかかわらず、10人中9人がサクラの場合は約75%の参加者が少なくとも1回サクラと同様の誤答をした。
同調には情報的影響と規範的影響の2つが作用することが指摘されている
情報的影響: 正しい行動をする手がかりとして、他者の行動を参照することによって生じる影響
多くの人がとっている行動は正しいに違いないという信念
アッシュの実験はサクラの中に一人でも本物の実験参加者と同じ回答をする者がいると、情報的影響の力が低下するため同調率が激減する
規範的影響: 他者の行動を暗黙の規範とみなすことによって生じる影響
他者から拒絶されたくない(好ましく思ってほしい)という動機づけ
アッシュの実験は集団のメンバーが既知、親しい仲間同士(凝集性が高い集団)の場合には規範的影響の力は更に強まることが知られている
なお、同調をしたからといって、多数派の意見を完全に受容し、内面化しているとは限らない
私的受容による内面的同調
多数派の意見に本心から同意して生じる同調
多数派から情報的影響を受けている場合に起こりやすい
公的受容による外面的同調
本心では同意していないのだが、表面上多数派に合わせる場合
多数派から規範的影響を受けている場合に起こりやすい
少数派の一貫した意見は、時には多数派による影響よりも内面的同調になりうることがある
モスコビッチらは、少数派の影響を示すためアッシュの同調実験のちょうど裏返しのような実験を行っている(Moscovich, Lage, & Naffrechoux, 1969)