『道徳の系譜』
本来は自己内の「よい」が
顚倒されるに至った歴史的な系譜を考察する
第1論文: 「善(グート)と悪(ベーゼ)」、「よい(優良, グート)とわるい(劣悪, シュレヒト)」
「よいグート」の起源は、高位の者が、自分自身に属する力の特性を「よい」と呼んだ そのような力を持たないことを「わるい」と呼んだ
まず自分のことを気遣い、次に他人を気遣うのが自然な順序
他人を害さないのであれば、自分のためのことでも悪いことではないはず
第2論文: <負い目>、<良心の疚しさ>、およびその類いのことども
約束を守る事
罪責の由来は負債
負った責任を果たせないこと
祖先に対する恐怖によって負債の意識が増大し、神という概念に変わる
要するに、恐怖を起源として、神という存在を形成している
キリスト教は、個々人が、唯一神に贖いきれない負債を負っているとする 自分の存在それ自体が、疚しいもの、という発想になる
「悪い」ものは目の前の的ですらなく、自分自身の生存それ自体になる
生を絶対的に否定する
人間の意思は、虚無を欲する
キリスト教に反するような、無神論者たちもまた、実は新しい信仰を持っている
哲学者、科学者、合理主義者、懐疑論者、etc.
彼らはキリスト教の没落後に徐々に出てきた
彼らは、神を信仰することに反対するが、「真理への意思」は禁欲主義的理想をそのまま受け継いでいる
キリスト教の世界観である「神」や「自由」のような概念を解体し、世界を没価値なものとして描き、世界それ自体に意味がないことを証明する
この流れは、キリスト教の理想の反対物ではなく、寧ろその必然的な帰結である