頒布
同人文化の中では、あえて「販売」という言葉を使わず、「頒布」を使う人々がいる。同人文化の中では、「頒布」はどのように意味づけられた言葉なのだろうか。 これを解明するため、本論文では以下のように論を進める。
まず第一節で、「頒布」・「販売」がどれだけ使われているのかを知るために、同人即売会チラシにおける「頒布」・「販売」の使用割合を調べていく。ただ、これは統計学的に不十分な調査のため、「同人文化では、『頒布』の方が多く使われている」のような主張の直接的な根拠とはならない。ここでは、考えていくための参考としてこの割合データを扱いたい。
第二節では、「頒布」の使用について言及した団体や個人を取り上げる。ここでは事例研究を通して、「頒布」の具体的な使用動機を見ていく。
第三節では、これらを受けて「頒布」を使う動機の仮説を四つ提示する。最後に「おわりに」として、今後の課題として可能かもしれない仮説検証の方法を述べる。
同人文化での「頒布」が、議題になることは多くない。著作権法や児童ポルノ法の方が、多く取り上げられるだろう。だが、同人文化における「お金を得る」という行為の社会的位置づけを調べるために、必要な議論であると考える。
4つの仮説
第1に、以上のような動機を見てきたが、そもそもそういうしっかりした動機が存在しない人もいるだろう。つまりは、「皆が使っているから、とりあえず私も使おう。どうやら『頒布』という言葉を使う風習なんだな」というふうな動機から「頒布」使う場合である。
第2に、準備会のように、有料と無料を一つの言葉で表すために「頒布」を使う立場である。何かしらの思想や意図を持たず、道具的に「頒布」を使う立場とも言える。
第3に、準備会が主張する「総参加者主義」に影響を受けた人々が、頒布を使う場合である。
第4に、自身の非営利性(原作者への意思表示を含む)示すために「頒布」を使う場合である。
作り手の立場
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