貿易赤字
仮に日本の経常黒字が数字通りの円買い圧力となるならばここまで円安にならないはずだというのが筆者の問題意識である
円安で大騒ぎした22年も経常収支は通年で見れば11.5兆円の黒字だったが、それでも円は対ドルで最大マイナス(以下、▲)30%以上も下落した。
貿易赤字がここまで慢性化したのは日本企業が国内市場を見限って対外直接投資を増やすという大きな経営判断を進めてきた結果だからだ。
そうして海外での投融資を増やした結果が先述した第一次所得収支黒字なのだ。
第1次所得収支は主に証券投資から得られる収益と直接投資から得られる収益で構成される CFベースだと赤字
その他サービス収支の赤字が拡大している理由は一つではないが、やはり研究開発分野において日本がかけてきた人的・金銭的コストが諸外国(特に米国)のそれと比較して大きく劣後しているという事実はありそうである。このように地道に進んできた変化を一発逆転する妙手は存在しない。
その他サービス収支の赤字は主に①デジタル、②コンサルティング、③研究開発の3項目に集約される。例えば22年上半期と23年上半期を比較すると専門・経営コンサルティングサービスが約▲4300億円から約▲1.1兆円へ2.5倍以上に膨らんだ。同項目はインターネット広告への支払いなどを含むという意味でいわゆる「デジタル赤字」の性格を帯びるが、近年、日本で事業拡大する外資系コンサルティング企業が日本で計上した売り上げの一定割合を本国へ送金(=支払い)していることも反映する。このほか米巨大IT企業が提供するクラウドサービスなどへの支払いを含む通信・コンピューター・情報サービスも約▲7600億円から約▲8600億円へ拡大している上、研究開発サービスも約▲9200億円の赤字で横ばいであった。
対応
特許や著作権などが生み出した企業の所得に優遇税率を適用する「イノベーションボックス税制」は既に欧州各国で運用されているものだが、その創設がようやく日本でも検討され始めているという。
熊本県における台湾積体電路製造(TSMC)誘致に象徴される対内直接投資残高についても「30年までに100兆円」という具体的な目標が掲げられるようになった。