裁判所「VTuberのキャラクター=魂」
VTuberというキャラクターへの言説は魂への言説と同じと見做される場合がある 例
裁判所は、マリンさんがどのようなキャラクターで、どのような活動をしているかを丁寧に認定し、原告・中の人がまさにマリンさんの名称で表現行為をしている実態を明らかにし、マリンさんに対する投稿は、その名称で活動をする者(すなわち中の人)に向けられたものであることを認定しています
大阪地方裁判所第16民事部令和3年(ワ)第10340号発信者情報開示請求事件
名誉毀損に関するVTuber特有の問題としては、書き込みに関する様々な状況から、いわゆる「中の人」が具体的に誰であるかを特定することができない場合に、「中の人」を離れたキャラクターとしての存在であるVTuber自身に対する名誉毀損が成立するのかという問題があります。
一般に、ある書き込みが名誉毀損罪に当たるというためには、その書き込みによって個人の社会的評価が低下することが必要とされています。つまり、一般的な読者ならその書き込みの対象となったのが誰であるかが分かる場合でないと、名誉毀損にはならないとされているのです。 したがって、あるVTuberの普段の言動や公に知られている情報などから、その「中の人」が誰であるかが具体的に知られており、VTuberに関する書き込みがその「中の人」を対象とする事実の適示であると一般に理解することができるときは、その「中の人」という特定の個人に対する名誉毀損が成立する可能性があります。
しかし、「中の人」が誰であるか知られておらず、VTuberに関する書き込みが特定の個人を対象とする事実の適示であると認識できない場合には、特定の個人の社会的評価が低下するとはいえない以上、名誉毀損は成立しないと判断される余地があります。例えば、特定のキャラクターやSNSアカウントに対する誹謗中傷ではあるものの、それが具体的にどの人物のアカウントなのかまでは一般読者には分からないような場合です。
もっとも、バーチャル上の社会において、「中の人」を離れたキャラクターとしてのVTuberに対する客観的な社会的評価が確立されている場合、これを低下させる書き込みをすることは名誉毀損として扱うべきであるという意見もあります。