私文書偽造
卒業していない教育機関の卒業証書や、保有していない民間資格の取得証明書、偽名(架空)の履歴書などを作成すると、私文書偽造となります。
刑事的な責任
判例を分析してみると,単に履歴書で学歴を詐称したことを理由に私文書偽造罪が成立するとは即断できません。
偽造罪とは,「名義人と作成者の人格の同一性の偽り」を生じさせることと定義されています。簡単にいうと,「実際に文書を作成した人」(作成者)と「その文書を読んだ一般人が頭に思い浮かべる文書を作成した人」(名義人)がずれるのが偽造です。 一方,内容虚偽の文書を作成することは偽造にはならないとされています。これは,刑法が内容虚偽の文書を作成することを別の罪として規定しているからです。
Aさんが現実には○○大学を卒業しているのに△△高校しか卒業していないと履歴書に書いていた場合,これを単に「Aさん」の学歴を偽った内容虚偽の文書と考えるのか。「○○大学が最終学歴のAさん」と「△△高校が最終学歴のAさん」は別人格なので「偽造」であると考えるのかで,私文書偽造が成立するかは異なります。この点についての検討が必要となります。
直接的な判例はないので、いくつか関連しそうな判例を読み解いている
民事的な責任
民事的な責任を追及される可能性は大いにあります。
まず,経歴詐称をして採用をされた場合,懲戒解雇となる可能性が高くなります。
懲戒解雇は,就業規則で事前に定めたうえで,労働者に周知をしておかないと効力をもちません。 厚生労働省は就業規則のモデル規則を作成していますが,同モデル規則でも,「重要な経歴を詐称して雇用されたとき」は「懲戒解雇」とすると定められています。もちろん就業規則で定めれば軽微な経歴詐称でも懲戒解雇にできるというものではなく,解釈上「重要な経歴」の詐称が必要となると理解されています。
関連