現場思考の手順
from 2025-05-08
論文マスターで10問ぐらい論文を起案・検討した時点で、現場思考とよくわれる抽象的な単語の意味が自分の中で明確化してきたので言語化する
2025-05-08時点で私が考える現場思考の手順
与えられた問題文(未知)に対し
問題文を読んで、関連判例(既知)を想起する
判例(既知)と問題文の事情(未知)を違いを認識し
似てる→違いは?
判例(既知)のロジック(判断基準)と結論を参考に
違いを評価し、結論を決定する
違いが結論にどのように影響するかを検討する
結論を補強するように文章構成する
その場で考えるのが重要、と言われることもあるが、字面から「じゃあその場でなんとかなるんだ」と思ってしまうが、全くの誤り。判例をかっちり覚えているかどうかで決まる。
判例を覚えていれば、現場で考えることはそこまで難しくない。そこで大差はつかないと思う
ここはまだ解像度が低いので間違っているかもしれないが、現時点ではそう思っている
判例を覚えている、ということは指針がはっきりしているということ
判例Xの考え方と事情がわかっていれば、Xと似た問題Yがでた時に、違いを認識して、その違いを同じ考え方で評価して結論を出せばいい。これで最低限の回答を作ることはできる
結論が異なる判例X,Zの2つを覚えているとさらに指針がはっきりする
XとZの中間になるような問題Yが出てくる
結論とそこに至る考え方がわかっているものが増えるほど、その間の問題の評価は容易くなる
間じゃない問題が出ても結局考え方は変わらない
具体的に考えてみよう
具体例:旧司法試験平成20年度第1問では、南九州税理士会事件と群馬司法書士会事件の中間になるような問題が出た
A自治会は,「地縁による団体」(地方自治法第260条の2)の認可を受けて地域住民への利便を提供している団体であるが,長年,地域環境の向上と緑化の促進を目的とする団体から寄付の要請を受けて,班長らが集金に当たっていたものの,集金に応じる会員は必ずしも多くなかった。
そこで,A自治会は,班長らの負担を解消するため,定期総会において,自治会費を年5000円から6000円に増額し,その増額分を前記寄付に充てる決議を行った。
この決議に含まれる憲法上の問題点について論ぜよ。
法務省:平成20年度旧司法試験第二次試験論文式試験問題と出題趣旨
本件の事情を上のフレームワークで考えてみると
判例と問題文の事情の違い
団体の性質
南九州:税理士会は強制加入団体
群馬:司法書士会は強制加入団体
本件:「地縁による団体」は強制加入団体ではなさそう
実際に未知の法律(地方自治法第260条の2)をよく読むと強制加入団体ではないことがわかる
寄付の内容の違い
南九州:政治献金
群馬:被災した別の司法書士会への復興支援
本件:地域環境の向上と緑化の促進を目的とする団体への寄付
判例のロジックと結論の中での位置付け
南九州税理士会事件:強制加入団体が政治献金(=個人が選択するべき事柄)を行ったので「目的の範囲外」で違憲
群馬司法書士会事件:強制加入団体であるが、被災した仲間を助けるための寄付金なので「目的の範囲内」で合憲
本件:強制加入団体ではなく、政治献金でもない
違いの評価
強制加入団体ではないので抜ける自由がある。これで合憲と言ってしまってもかまわなそうだ
寄付の内容の違い→どちらかと言えば群馬に近いので合憲なのではないか?
地域環境の向上を目的とする団体への寄付は「政治献金」よりも「被災した仲間を助けるための寄付金」に近く「個人が選択するべき事柄」と言えなそう
以上から、答案の結論は合憲にしよう決定する
違いの評価は真逆からの評価も考えると、反対利益として使える
地縁による団体は、しがらみがあって「実質的に」強制加入団体というような強弁もできそう
結論を補強するように文章構成する
合憲に向けて
確かに、(反対説)
しかし(合憲要素)
のように文章を構成する