為替リスクはゼロサムゲーム
厳密にはゼロサムではないという議論はあるが、株式などに比べると明らかにゼロサムゲームに近い 例えば「ドル売り円買い」は「ドル売り」であると「円の買い」であり、立場をかえると売買の方向が逆になるということからもゼロサムであることが分かりやすい取引形態であるとされています。
ただし、これらが常にゼロサムであるかどうかは議論が分かれます。例えば、米国政府が基軸通貨の特権を活かしてこれからも米ドルを遠慮なく刷り続けるとしましょう。すると、世界中に米ドルはあふれることが誰の目にも明らかになり、米ドルの他通貨に対する交換レート(つまり価格)は下がり続けることになります。そうなると極めて長期間に亘って米ドルの売り手が儲けて、買い手が損をするという非ゼロサムな状況もありえるのかもしれません。 土居 雅紹 ノースキャロライナ大学経営大学院MBA取得。大和証券、大蔵省財政金融研究所勤務を経て1998年ゴールドマン・サックス証券入社。2000年にeワラントを開発・導入 外国為替のリスク自体は「ゼロサムゲーム」のリスクだ。一方の通貨がもうかるときには他方の通貨が損をして、少なくとも実質価値に関しては両方の損益の合計はゼロだ。
外国為替市場全体では、お互いの見通しの違いに対して賭けが行われるが、その賭けの損益合計は取引コストを除くとゼロだ。株式投資のように、資本を提供する際にリスクプレミアムが価格に含まれて「ハイリスク・ハイリターンの原則」が成立する種類のリスクを取るのではない。
ドル建ての定期預金金利が一見高く見えても、「それは、為替リスクに賭けるギャンブルであって、特段魅力的なものではありません」と答えるのが、一応はオーソドックスな答えだとしておきたい。
基本的には五分五分であり、為替レート変動のリスクを負う分だけ投資家にとっては不利だと考えていいだろう。 現在のレートでドルが買えるということは、このレートで現在の内外金利ならドルを売ってもいいと思う人がいるからだ、ということは忘れない方がよさよさそうに思う。
例えば、現在のような金利情勢を前提とすると、
ドルロング(ドルの買い持ち)のポジションは、ドル金利の方が円金利よりも高いことのメリットを相殺するほどに円高にならなければ勝ちである。
ドルからの円ロングの場合、円金利の低さを補って余りある以上に円高になると勝ちである。
為替レートと金利とが「セットで取引されている」という感覚は、仕事で為替取引に関わると自然なものと思うようになるし、個人であってもFX(外国為替証拠金取引)に真剣に取り組むと体感に染み込むようになるだろう。