法人税率引き下げ競争
法人税率引き下げ競争は、米国Ronald Reagan、英国サッチャー両首脳の法人税率引き下げに始まり、東西冷戦が終結した90年代に欧州諸国で激化した。ポーランドやハンガリーなど旧東欧諸国が、法人税率を引き下げて国境の開放されたドイツやフランスから企業を自国に呼び込み、雇用の拡大や経済の活性化をはかった。これに対抗してドイツ、フランス、英国などが、国内企業の移転を引き留めるため自国法人税率を引き下げた。すると旧東欧圏はさらに法人税率を引き下げた。このような動きが全世界に広がり、結果として先進諸国や新興国の多くは税収を失う結果となった。これが、「Race to the bottom」と呼ばれた「法人税率の引き下げ競争」である。 https://gyazo.com/15c527865f43e20cbb39a1cf2aadc3de
法人税の引き下げ競争については、全てが否定されるわけではない。租税特別措置の見直しなど課税ベースの拡大とセットでなされた場合には、税率の引き下げが経済に好影響を及ぼし、税収も増加したという事実がある。欧州諸国で生じたそのような現象は「法人税パラドックス」と称されてきた。
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わが国とドイツで法人税収(対GDP(国内総生産)比)の推移を見ると、両国とも2010年から2018年にかけて、趨勢的に法人税収は伸び、GDP比で1ポイント前後増えている。
このような、税率を引き下げても税収が伸びたという「法人税パラドックス」の生じた主因としては、課税ベース拡大とセットで税率を引き下げたことが、アントレプレナーシップを刺激し、「起業」が増え経済活性化につながったのではないかと分析されている。
米国が「世界各国は企業への課税率を最低でも21%とすべき」と発言したことで、法人税の国際最低税率導入に向けた動きが強まった
KPMGスイスのペーター・ユーベルハルト氏によると「これまでのところ最低法人税率に反対している主要国は皆無だ」。