東京オリンピック招致贈賄疑惑
2020年東京オリンピック・パラリンピックのスポンサー契約をめぐり紳士服大手「AOKIホールディングス」側から総額5100万円の賄賂を受け取ったとして、東京地検特捜部は17日、大会組織委員会元理事の高橋治之容疑者(78)を受託収賄の疑いで逮捕した。 AOKIは公式ユニフォームなどを手掛けた
電通の幹部だった高橋容疑者は2014年に組織委メンバーになった。 組織委の理事は、職務に関して金品を受領することを禁止されている「みなし公務員」にあたり、特捜部は資金提供が賄賂にあたるか調べていた。 東京大会の招致をめぐる贈賄疑惑は、2016年1月、WADA=世界アンチドーピング機構の第三者委員会が、ロシアの一連の組織的なドーピングを調査していた中で持ち上がりました。
指摘を受けてフランスの検察当局が捜査を開始。日本の銀行口座から国際陸連のラミン・ディアク前会長の息子に関係するとみられるシンガポールの会社に東京大会の招致を名目に、2回に分けて合わせておよそ2憶2000万円が振り込まれたとして贈賄の疑いで捜査していると公表しました。
招致委員会の理事長だったJOCの竹田恒和前会長は、振り込みを認めたうえで、「招致計画づくり、ロビー活動など多岐にわたる招致活動のコンサルタント料で、正式な業務契約に基づく対価として行ったものだ。なんら疑惑を持たれるような支払いではない」などと潔白を主張していました。 2016年9月、JOCの調査チームが調査結果を公表します。当時の招致委員会が行った金銭の支払いに違法性はなかったと結論づけました。
しかし2018年12月になって、フランスの裁判所が竹田前会長について、裁判を開くかどうかどうかを判断するための手続き「予審手続き」を開始し、予審判事がフランスで竹田会長本人を聴取したことが明らかになりました。
竹田前会長は、2019年1月に会見を開き「報告書では、コンサルタント業務に対する適切な対価だったと結論づけている。私が、シンガポールの会社と、国際陸連の前会長とその息子がいかなる関係だったか知らなかったことも確認している。この会社との契約の締結が日本の法律において違法性はないと結論づけた」と改めて潔白を主張しました。
しかし、この会見で竹田前会長は、記者からの質問には応じず、会見を7分余りで打ち切って退席したことに批判が高まりました。
またIOCが、東京大会へのダメージなど強い懸念を関係者に伝えたこともわかりました。そして3月、竹田前会長は「今回世間を騒がせたことを大変心苦しく思っている」として会長を退任することを表明しました。
招致段階の試算で7340億円だった大会開催経費が、1兆6440億円に膨らんだ問題も大きなテーマだった。
19年、組織委が対外的に公表した事業報告では、都や国の公費で発注された大会用バスや警備計画策定など一部事業の契約額が「公表できない」とされた。大会スポンサーと結んだ随意契約だったこともあり、疑念が増大。都議会からは「ブラックボックスだ」「契約金額が公表できないなら、予算の執行を凍結するべきだ」などと厳しい声が相次いだ。 その後、組織委は契約先の同意を得られた約110件(総額290億円)について公表したが、今も49件(総額680億円)は非公表のままだ。
日本オリンピック委員会(JOC)会長の竹田恒和氏の退任につながった大会招致を巡る贈賄疑惑でも、調査を求める声が上がったが、都議会に報告された情報はほとんどなかった。
20年3月、都議会は議員提案で、組織委に大会関係文書の適切な保存・管理を求める条例を可決した。1998年の長野冬季五輪でも招致委の会計帳簿が焼却され、招致を巡る疑惑解明が阻まれたことなどを教訓にする狙いがある。
ただ条例の規定は、努力義務。条例制定に関わったある会派の幹部は「大会経費の精査やIOCとの交渉の経過など、どこまで明らかにできるか。都議会の力が問われるのはここからだ」と強調。その使命は、改選後の新たな都議会へと委ねられる。