排他性
「exclusive right」(排他的権利)は,
専用権(exclusive right to work)と を含みうる包括 的な用語である。
特許権の本質を専用権(exclusive right to work)とする国が世界の大半を占めており,排他権(right to exclude)とする国 は数少ない。
アメリカでは,特許権の本質が,先発明主義とは関係なく「専用権」から「排他権」に変更された。最初に特許権を排他権 と規定したのは,現行(1952 年)の特許法である。これを除いて,アメリカでも,すべての特許法で特許権を専用権と規定していた。さらに,アメリカでは,特許法以外の法律(コモンロー,州法)によって,積極的権利(すなわち発明を実施する 権利)が認められている。
わが国では,アメリカよりも早く,明治21年(1888年)の特許条例で,特許権を排他権と規定したが,これは,わが国に は合わず,間もなく,特許権の本質は,排他権から専用権に変更された。 わが国 においては,明治21年(1888年)の特許条例では,特許権の本質が排他権である旨が規定されたが, それ以外の全ての特許法では,特許権の本質は専用権である旨が規定されている
旧来の 専用権説には誤解があるので,本稿では,それを明らかにして,国際的に通用する本来の専用権説を説明する。
特許 法68条によれば,本来,専用権の対象は特許発明のみであって,その実施品や発明品を含むものではない。さらに, 基本発明の特許権者は,基本発明の実施をする権利を専有するだけで,利用発明については実施権を有していない。利用発明 の特許権者は,利用発明についてのみ実施権を有するだけで,基本発明については実施権がない。それゆえ,本来の専用権に よれば,いずれの特許権者も,利用発明を実施すれば,特許法 72 条を待つまでもなく,相手の特許権を侵害する。
これに 対し,旧来の専用権説は,72条を待つ必要があり,無体の特許発明と有体の発明品や実施品を混同している。
排他権説,旧来の専用権説,本来の専用権説のいずれの説をとるかによって,特許侵害の有無に差が生じる。イスの想定ケース1a,1b,1c により,それを具体的に示す。