小売店が児童ポルノ販売して訴えられるとVISAも責任を問われる
カリフォルニア州の連邦地裁は7月29日、ポルノサイトPornhubの親会社のマインドギーク(MindGeek)が児童ポルノの収益化を支援したとする訴訟から、決済大手のVisaを排除することを拒否した。 この訴訟は、2014年に13歳だった女性が起こしたもので、彼女の当時のボーイフレンドが彼女の同意なしにビデオを撮影し、ポルノサイトに投稿を行ったとされる。マインドギークは、その動画を複数のサイトに配信し、広告収入を得ていた。
Visaはそれらのサイトの広告主とマインドギーク間の支払いを処理していた。女性は、Visaとその関連会社がコンテンツの違法性を認識しつつ、取引を続けたと主張している。
Visaは、この裁判の被告から同社を除外するよう求めたが、裁判所はこの訴訟の中心は、違法ビデオのマネタイズにあると主張していた。
コーマック・カーニー連邦地裁判事は29日、Pornhubやその他のマインドギーク傘下のポルノサイトが児童ポルノを配信していることを知りながら、Visaが同社との関係を断とうとしなかったと非難した。判事は、「原告が受けた精神的外傷は、マインドギークによる彼女のビデオの収益化に直接起因する」と述べ、Visaの責任を問う姿勢を明確にした。
基素.icon判事の言い分は理屈の上ではそうかもしれないが、もしそれでVISAに責任を求めた場合に結局回り回って自由な決済ができなくなるのでは?(既になっているのに)
その後
2025年4-9月:Hsu 判事が修正後訴状について Visa の motion to dismiss を 認容(Visa勝ち)。「passive commercial relationship と認識だけでは TVPRA 共謀責任は問えない」と判断
Opus 4.7.iconここまでのまとめ
事案:Fleites v. MindGeek S.A.R.L., et al.
カリフォルニア州中部地区連邦地裁の 民事訴訟。原告 Serena Fleites(個人)、被告は MindGeek(Pornhub 親会社)、その役員、そして Visa Inc.。
原告と事実関係
原告は 13歳のとき、当時の交際相手から圧力を受け性的に露骨な動画を撮影され、無断で Pornhub にアップロードされた(タイトル “13-Year Old Brunette Shows Off For the Camera”)。
動画は数百万回視聴され、MindGeek は削除要請後も再アップロードを許容したとされる。
原告はホームレス状態・ヘロイン依存・自殺企図・成人による更なる搾取を経験。
2021年6月提訴。NYT クリストフ寄稿 “The Children of Pornhub”(2020年12月)が社会的トリガー。
法的請求
主要なものは2つ:
1. TVPRA(Trafficking Victims Protection Reauthorization Act, 18 U.S.C. §1591, §1595)に基づく beneficiary liability(人身取引から金銭的利益を得た者の責任)と civil conspiracy(民事共謀)
2. California Unfair Competition Law (UCL) Cal. Bus. & Prof. Code §17200 違反
Visa に対する核心的主張:「Pornhub の違法収益化を知りながら決済処理を継続したことで、人身取引ベンチャーから利益を得た/共謀した」。
第1ラウンド:Carney 判事 2022年7月29日(Visa 敗)
motion to dismiss(訴え却下申立て)を 却下。Visa は本案審理に進まされた。
主要な論理:
「passive financial intermediary」抗弁の拒否。Visa は「自分は受動的な決済処理者にすぎない」と主張したが、判事は「Visa は MindGeek を merchant として認識するかどうかの決定権を持つ」と認定。
鍵となる事実認定:「Visa が MindGeek との取引を一時停止した際、MindGeek はコンテンツの 80% を削除した」。これにより Visa が MindGeek の意思決定に対し considerable sway(相当な影響力)を持つことが推認される、と判断。
判事の引用に値するフレーズ:“the court can comfortably infer that Visa intended to help MindGeek monetize child porn.”
第2ラウンド:Hsu 判事 2025年9月頃(Visa 勝)
その後の手続:
2023年に TVPRA が改正され、民事責任の範囲が明示的に拡張された
原告は Second Amended Complaint(SAC、第2修正訴状)を提出
担当裁判官が Carney から Judge Wesley L. Hsu に交代
Hsu 判事は 2025年3月7日・4月24日に口頭弁論を開催
Hsu 判事は SAC に対する Visa の motion to dismiss を 認容(全請求 dismiss)。
論理:
TVPRA beneficiary liability:Visa が「人身取引ベンチャーへの参加」から利益を得たというには、単なる商業取引以上の関与が必要。決済処理は MindGeek の通常事業との取引であり、人身取引ベンチャーとの取引ではないと整理。
Civil conspiracy:共謀の成立には agreement、shared purpose、intent to advance the underlying wrong が必要。Visa にあったのは「認識」と「商業関係の継続」だけで、合意・共有目的・促進意図の主張が欠落。“passive commercial relationships and knowledge of misconduct are insufficient”。
California UCL/FAL:実体請求が立たないため付随する州法請求も立たず。
要するに Hsu 判事は 「knowing + continued processing」では足りない、もう一段深い involvement が必要と Carney より厳しい pleading standard を課した。
2つの判決の比較
table:_
Carney (2022) Hsu (2025)
段階 第1次訴状の motion to dismiss SAC の motion to dismiss
結論 Visa の申立て却下(Visa敗) Visa の申立て認容(Visa勝)
共謀責任の閾値 認識+影響力+継続処理で推認可能 合意・共有目的の具体的主張が必要
鍵となる事実 「Visa が止めると 80% 削除された」 同じ事実でも合意の証拠としては不十分と評価
法的状態と現状
控訴の有無は現時点で公開情報からは確認しきれない(原告が第9巡回区控訴裁判所に持ち込む可能性はある)
仮に Hsu 判決が確定すれば、**「決済処理者の TVPRA 共謀責任には高い pleading 障壁がある」**という連邦地裁レベルの先例となる
ただし unpublished decision なので拘束力は限定的、説得的先例にとどまる
君の関心からみた示唆
実務上の決済ブランドのリスク認識は Carney 判決の世界観(処理継続だけで責任ありうる)で固まったまま、Hsu 判決が出ても緩む保証はない。理由は:
1. 判例が揺れている状況では、ブランド側は最も厳しい解釈に合わせる(chilling effect の経済学)
2. 一度作った社内ポリシーを「司法が緩んだから」という理由で緩める意思決定コストは、現状維持コストより遥かに高い(status quo bias × CYA インセンティブ)
3. NCOSE 等の活動家の Dirty Dozen List 圧力は司法判断と独立に存在する
つまり**「司法的には敵だった Carney → 現状は味方の Hsu」と振り子が動いているが、業界実務はその振り子に追随しない非対称構造**。この非対称性こそが、君のプロジェクトが対峙する敵の正体。