大冷笑時代
2026-06-15 "Meet the New Bosses, Worse Than the Old Bosses"
「今は第二の金メッキ時代だ」という比較が流行っているが、それは昔の金メッキ時代に失礼というものだ。今の方がずっとひどい。
富の集中度で言えば、1918年の上位5人と2025年の上位15人(人口増を補正)を比べると、GDPや総資産に対する割合はいずれも現代の方が圧倒的に高い。ロックフェラーたちなどかわいいものだった。
政治的影響力も同様で、2024年選挙では300人の億万長者が政治献金の19%を占めた。そして選挙後はさらにカネの力が強まっている。
メディアへの腐食も深刻で、マスクはXを右翼の沼地に変え、エリソンはCBSを買収してFoxニュースの2号店にしようとしており、CNNも同じ目に遭わせようとしている。
大統領職は今や露骨に売り物と化しており、トランプは政権に復帰してから個人資産を42億ドル増やした。金メッキ時代にも腐敗スキャンダルは多かったが、このスケールには到底及ばない。
超富裕層が政治権力で何をするかといえば、まず自己利益の追求だ。ザッカーバーグはSNSの子ども保護法案を潰し、コーク一族は気候変動対策を何十年も妨害してきた。
そしてマスクのように、政治的過激主義を後押しする者もいる。世界一の金持ちが「グレート・リプレースメント」陰謀論に熱烈に傾倒しているという現実は、かなり異常だ。
にもかかわらず反発が弱い。理由は「どうせ皆やってる」という冷笑主義と「世の中そういうもの」という諦念が蔓延しているからで、これは金メッキ時代よりはるかに病んでいる。
昔の「強盗男爵」たちも確かに冷酷な連中だったが、カーネギーホールやフリック・コレクションのように、少なくとも「ノブレス・オブリージュ」として大金を慈善事業に投じた。それ自体がPR目的でも、そのPRが必要だと思っていた社会は、今よりずっと健全だった証拠だ。
今の億万長者は慈善活動にほとんどカネを出さない。マスクとエリソンはどちらも資産の1%以下しか寄付していない。
それどころかマスクはDOGEを使って途上国への援助を打ち切り、何十万もの子どもたちを死に追いやって喜んでいた。反慈善家と呼ぶべき存在だ。
結論:今は「第二の金メッキ時代」ではない。それよりずっと前に金メッキ時代の不平等水準は超えていた。今は寡頭制の時代であり、超富裕層の権力乱用のスケールは前代未聞で、しかも彼らには昔のような贖罪的な美点もない。新しいボスたちは、旧いボスよりはるかに悪い。
偽善を捨てた億万長者
2026-06-16 The Theory of the Vulgar Class
トランプが80歳の誕生日にホワイトハウスの芝生でケージマッチ(格闘技)をやったのだが、リンカーン記念館の階段でUFCファイターと記者会見までやらかした。共和国の美徳を象徴するはずの建造物をぶち壊す、救いようのない下品さだ。
この「下品さ」を単なるエリート主義的批判と切り捨てるなかれ。これは社会規範の崩壊という、もっと深刻な症状の表れだ。
ヴェブレン『有閑階級の理論』(1899年)によれば、金ピカ時代(Gilded Age)の富裕層は、富を誇示しつつも「まともな社会の一員」として見られることを重視していた。ロックフェラーのような連中が慈善事業に精を出したのはその典型例だ。
今日のトランプ周辺オリガーキーはそういう体裁すら捨てた。慈善はほぼゼロ、下品な振る舞いは確信犯的な「庶民への喧嘩売り」だ。超格差時代の今は、富裕層が一般市民から完全に切り離されており、まともに見える必要すら感じていない。
これはギルデッド・エイジの再来ではなく、ローマ共和国の崩壊に近い。極端な不平等→強権者の台頭→共和制の形骸化、というパターンだ。ローマでも東方征服の戦利品で一握りの人間が超富裕になり、最終的には共和政が終わった。
ローマ末期の権力者たちが民衆の歓心を買うためにやったのが剣闘士競技の後援。ホワイトハウスのケージマッチはその現代版だ。
要するに、トランプ流の下品さそれ自体はたいした問題じゃない。だがそれは価値観・規範の崩壊を示すシグナルであり、放置すれば「アメリカの実験」が終わりを迎えかねない。ストア哲学者セネカの言葉通り、「繁栄はゆっくり育ち、破滅への道は速い」。