人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか
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2017
21世紀初頭の日本の労働市場に起きているのは、いわば好況期における「賃金の上方硬直性」とでもいうべき新現象です。そこでは、経済理論のうち、市場の需給調整機能を重視する新古典派はもちろん、不況期における賃金の下方硬直性を主張したケインズ派さえも想定してこなかった状況が、日本で生じているかもようにも思えます。 本書の総括では、各章の内容を次の7つのポイントから整理しました。
【需給】労働市場の需給変動からの考察
【行動】行動経済学等の観点からの考察
【制度】賃金制度などの諸制度の影響
【規制】賃金に対する規制などの影響
【正規】正規・非正規問題への注目
【能開】能力開発・人材育成への注目
【年齢】高齢問題や世代問題への注目
本の目次
第1章 人手不足なのに賃金が上がらない三つの理由 近藤絢子 第2章 賃上げについての経営側の考えとその背景 小倉一哉 第3章 規制を緩和しても賃金は上がらない――バス運転手の事例から 阿部正浩
第5章 給与の下方硬直性がもたらす上方硬直性 山本 勲・黒田祥子
@paddy_joy: 理由の一つは「賃金の下方硬直性がもたらす上方硬直性」、つまり日本では"賃下げ"が難しいからこそ、好景気になっても「不景気になった時に賃下げできない」という理由で賃上げに踏み切れないという傾向です。逆に賃下げを断行できた会社は好景気には賃上げしているという面白いデータがあります。2/n 第6章 人材育成力の低下による「分厚い中間層」の崩壊 梅崎 修
第7章 人手不足と賃金停滞の並存は経済理論で説明できる 川口大司・原ひろみ
第8章 サーチ=マッチング・モデルと行動経済学から考える賃金停滞 佐々木勝
第9章 家計調査等から探る賃金低迷の理由――企業負担の増大 大島敬士・佐藤朋彦
第10章 国際競争がサービス業の賃金を抑えたのか 塩路悦朗
第11章 賃金が上がらないのは複合的な要因による 太田聰一
第12章 マクロ経済からみる労働需給と賃金の関係 中井雅之 第13章 賃金表の変化から考える賃金が上がりにくい理由 西村 純
第14章 非正規増加と賃金下方硬直の影響についての理論的考察 加藤 涼
@paddy_joy: つまり労働力不足は非正規雇用である程度は補えてしまえるが故に、正規雇用の給与も上がりにくかったという構造が浮かび上がります。これは潜在的に失業していた高齢者や既婚女性に対する正社員からの所得移転とも言え、給与「総額」自体は2010年から順調に伸びていることからも窺えます。5/n 第15章 社会学から考える非正規雇用の低賃金とその変容 有田 伸
第16章 賃金は本当に上がっていないのか――疑似パネルによる検証 上野有子・神林龍
結び 総括――人手不足期に賃金が上がらなかった理由