トリガー条項は凍結解除されない
レギュラーガソリン価格が1リットル当たり160円を3カ月連続で超えた場合、揮発油税(ガソリン税)のほぼ半分に相当する約25円の課税を停止し、価格を引き下げる制度。 3カ月連続で130円を下回った場合は元の税額に戻す仕組みだ。民主党政権時の2010年に導入されたが、東日本大震災(2011)の復興財源を確保する目的で11年から凍結されている。 政府は22年1月、物価高騰対策の一環としてガソリン補助金を導入し、消費者の負担軽減を図ってきた。
一方、
トリガー条項の凍結解除には法改正が必要で、一度発動すると元に戻しにくい
条項発動に伴う国や地方の税収減を補塡(ほてん)する仕組みも必要となる
ため、凍結解除を見送ってきた。
しかしじゃあこんな条項意味がないじゃないか基素.icon
制度の趣旨を素直に解釈すると、トリガー条項は、資源価格高騰などやむを得ない事情でガソリン価格が急激に上昇した場合に、これに対応しきれない業者や生活者を救済する激変緩和措置として設けられたものだろう。まさに今の状況がそれに当たるので、この凍結解除、すなわち自然な発動が求められるのではないかと思われるのだが、その気配は全くない。
代わりに補助金を出している
新たな補助金制度を作るよりも、元々ある制度の趣旨を生かす方が自然だし、制度をシンプルに運用できる。しかし、政府の意向は、暫定税率=特例税率による税収は固定化して守りたいということであるらしい。 そもそも、お金に色は着いていないので、「○○による税収は、××に支出する特定の財源だ」という決め事に実質的な意味はない場合が多いはずだ。
「××に対する支出」が一般財源からも支出されなければならない重要度の高いものなら、この支出に充当された税収の分だけ、一般財源に余裕ができるので、「○○の税収」は実質的に一般財源として流用されたのと同じだ。
「○○は××の特定財源だ」という呪文は、専ら「○○税」を創設するために、一定数いる知恵の回らない国民を納得させるための方便にすぎない。このことは、民主党政権時代に一部の政治家も含めて丸め込まれた「消費税は社会保障のための財源」との説明を思い出すとよく分かる。 方便はウソの一種なので、ウソを撤回するときにめんどくさいことになる
直接の補助を考えるときに、価格に対する補助が相対的に、より富裕な者をより多く補助していることの分配論上の問題点も認識しておくべきだろう。
筆者が考える、ガソリン価格に関わるあるべき政策の優先順位を大まかに言うと、
(1). ガソリン価格への補助をやめて、困窮者への所得補助を充実させる、
(2). (1)の早急な実現が不可能で激変緩和措置が必要な場合、トリガー条項の凍結解除を補助金よりも優先する、
しかし、筆者の案が実現しないと信じるに足る、残念で強力な現実が存在する
困窮者以外にメリットが見えづらい
周り回ってあるはずだが、直接的なメリットはない基素.icon
困窮者の所得補助は一度仕組みを決めるとそれでガソリン価格も電気代もガス代も価格メカニズムに任せることができる効率の良さがあるが、この効率性は、政治家や官僚にとっては、個々の品目と関連する業界に対して政策を「やっている感」を醸し出す上ではむしろ邪魔になる。
ガソリン価格の上昇が生活者の不満と共に報じられて政府が右往左往することは、政府の当事者にとってはまんざら悪いことでもないのだ。
直接的で近視眼的な賛否を超えて合理的な状態を実現するためには、国民が政策の立案・実行を委託する政治家や官僚に良識と能力が必要だが、どうやらわれわれはそのような政治家や官僚の養成に不熱心だった。