トヨタ春闘
2018年以降、トヨタのベア(引用者注:ベースアップ。賃金改善分)を非公開にさせていただいています。それをやった結果、平均80社でトヨタの賃金改善分を上回る状況になっています。
トヨタ経営側は昨春実績の1300円を超えるベアを回答したが、具体額を伝えたのは労組執行部の64人だけ。執行部は連合や自動車総連だけでなく、6万8千人の組合員にも伝えないという。
背景に何があったのか。豊田章男社長は回答の際、「トヨタを支える関係各社との賃金の格差があまりにも開き過ぎた」と語った。
上田達郎専務役員によると
トヨタ組合員の平均年収は770万円でサラリーマン全体の上位10% 一方で中小も含む系列メーカーの35歳時点の月給は、標準的な生活が送れる水準に4割の企業で届いていない、と推計する。
系列は長く、トヨタのベアより少額で決着させてきた。トヨタ経営側はその慣行を断ち、格差是正を促すという。非公開は来春以降も続ける方針。
「トヨタのベアは注目され過ぎだ」と幹部は漏らす。
トヨタ労使は18年春闘から経営側が具体的なベア額を公表せず、19年からは労組側もベアの要求額を非公表にした。
中小企業などはトヨタほどベアが上がらず賃金格差につながることが非公表の理由としていた。
トヨタ労組の西野勝義委員長は同日の会見で「組合の内外とも(賃金の上げ幅に焦点をあてる議論から)なかなか切り替わらない」と、ベアの有無も非公表にした理由を説明した。
日本総合研究所の山田久主席研究員は、春闘の節目になる可能性を指摘する。
「国際競争や産業内格差を背景に、相場役が引っ張る方式はすでに壊れていた。官製春闘で無理に復活させたが、車産業の競争激化を機に矛盾が露呈した」
その上で「賃上げの外部検証は欠かせない。ベア額を出せないなら、他社や過去と比べられる別データの公開が必要では」と話す。(竹山栄太郎 山本知弘)