ソーシャルDRM
”電子透かし”技術を使った権利監視の方式のことで、サードパーティ製の電子書籍ビューワでも自由に作品ファイルを閲覧可能にするもの システムに強く依存するDRMに対して、システムにあまり依存しないDRMをソーシャルDRMやDRMフリーという。
メールアドレスなど個人情報の一部を電子透かしとしてコンテンツに埋め込む方法が一般的。複製は可能だが、利用者の特定ができる。必ずしも専用ビューアを利用する必要がなく、読者は使い慣れたビューアを利用できるといったメリットがある。
もし違法コピーが出回った場合、利用者自身の個人情報も出回ってしまうことになり、心理的な抑止効果が期待できる仕組みである。このように、社会的に出回って欲しくない個人情報を利用することから、ソーシャルDRMと呼ばれる。
音楽ではAppleやAmazonをはじめとして、DRMフリーのビジネスモデルが一般的になった。しかし、学術書や専門書、実用書や一般書など、用途も利用形態も価格帯も異なり、権利保護に対するニーズがそれぞれ異なる出版物において、ソーシャルDRMやDRMフリーは普及するだろうか。
ソーシャルDRMやDRMフリーを採用した例としては、ハリー・ポッターの電子書籍サイト「Pottermore」が有名である。日本では、技術書を出版するO'Reilly Japanが、自社の電子書籍をDRMフリーで提供。2014年にはJTBパブリッシングが「たびのたね」にソーシャルDRMを採用し、大手出版社の採用事例として話題になった。
BCCKSは読者がEPUBをダウンロードする際に、購入者情報を埋め込むことができる「EPUBソーシャルDRM機能」を提供している。
電子透かし市場の主要プレーヤーは数社存在する。2011年からソーシャルDRMを提供しているオランダのBooktreamは、最近世界市場に乗り出している。主要顧客の1つはJ・K・ローリング氏の「ハリー・ポッター」シリーズの専門サイト「Pottermore」だ。オンラインコミュニティーであり、電子書店でもあるPottermoreは、2012年の立ち上げ以来、Booktreamの技術を使っている。
英大手出版社のHarperColllinsと米電子書籍出版社LibreDigitalはBooktreamの競合である米Digimarcの「Guardian Watermarking for Publishing」を選んだ。同社の違法コピー対策技術は、電子書籍に不可視な透かしを入れるだけでなく、透かし入りのコンテンツがアップロードされていないか監視するため、ネット上を年中無休でクロールしている。
Digimarcは透かし入りコンテンツを見つけると版元に一意の識別子を送り、版元はこの識別子で取引記録をチェックできる。Digimarc Guardianの透かしは購入者の個人情報は含まれない、アノニマスなデジタルIDだ。