シリコンバレーのSOの標準的運用
@shibataism: 1/ 信託SOがいろいろ話題になっているようなので、アメリカ(シリコンバレー)のスタートアップで僕がよく見る標準パターンっぽいものと、その派生系みたいなものを書いておきますね。 以上、アメリカ(シリコンバレー)の長ーい歴史の中で産まれてきたベストプラクティス的な要素もあると思いますので、SOの制度設計はあまりトリッキーなことをせずに、上記のA-Dをしっかり教科書通りにやるのが一番いいんじゃないかと僕は個人的には思っています。
スタートアップのSOは、大体こんなパターンです。
VestingやCliffを付けるのは、途中(4年以内)で辞めた場合にVestされていないSOを会社側が取り戻せるようにするためです。
B: 課税タイミングは2つ。
B1: SO行使時に (FMV - 行使価格)は給与所得として課税 B2: 売却時に(売却価格 - 行使時のFMV)がキャピタルゲインとして課税
FMVとは、その時点での株式の適正価値で、アメリカでは409Aというプロセスを経て弁護士が算定し、取締役会で承認されます。 Early Excerciseというのは、まだVestされていないSOも先に行使できるようにする仕組みです。
(Vestingは有効なので、途中で辞めた場合は、Vestされていない部分の株を会社が同額で買い戻します。)
アーリーステージの場合行使価格が小さくB1を0と見做せる
レイターステージの場合行使価格が大きいのでB1が大きくなる
D: 退職後の行使可能期間を長く(10年とか15年)する
従来の標準パターンでは、退職後、X=3ヶ月以内にSO行使しないとSO剥奪されます、というルールがほとんどでした。
この場合、退職から1年以内に、
D1: 株数 x 行使価格 = SOを行使するのに必要な現金
D2: 株数 x (FMV - 行使価格) = B1に相当する税金
の2つの支払いが必要になります。
D1は払えても、(FMV - 行使価格)が大きくなっている(つまりスタートアップが入社時よりも大きく成長している)とD2の税金が払えない!というケースが出てくるわけです。このパターンを何度も見てきました。
SOを行使するタイミングで株が売却できないことに注意
未上場だが会社が成長した状態(FMVが高くなっている状態)で会社を辞める場合、D1は払えてもD2の税金が払えないというパターン
例:(色々調整された結果)行使価格100円で10000株持っていたとする。FMVが3000円の時に退職するとすると
D1が100万円、D2が2900*10000*0.2=580万円支払う必要がある
そこで、最近では、Xを3ヶ月ではなく、10年とか15年とか長く取る会社も出てきました
Xが十分長ければ、手持ちの現金がない(元)従業員がいても、Exit(M&AかIPO)まで行使せずにSOを保有し続けられるので、問題解決する場合が多いです。
M&AやIPOの場合は、SO行使と同時に株を売却する(できる)ので、D2の税金が払えなくなることは物理的にあり得ません。