MAGAの崩壊
Feb 13, 2026 The MAGA Bubble Is Imploding - Paul Krugman
トランプ政権は経済でも法執行でも行き詰まっており、株価という誤魔化しも通じなくなってきた
MAGAバブルの崩壊が加速している。国民はもうガスライティングに乗らない。政権側のおべっかと虚勢は焦りの臭いしかしない。
Pam Bondi司法長官のキレ芸が象徴するもの: 下院司法委員会で「落ちこぼれ弁護士め」とわめき散らしたボンディ。しかも「エプスタイン問題?ダウが5万超えてるのになに言ってんの」とか言い出した。子どもへの性的虐待をカネで誤魔化そうとする、倫理的に終わってる発言だが、それ以上に必死さが滲み出ていてみっともない。
Sonnet 4.6.iconボンディ「落ちこぼれ弁護士め」事件の詳細
日時・場所: 2026年2月11日(水)、米国下院司法委員会(House Judiciary Committee)の公聴会
何が起きたか: 司法長官パム・ボンディが議会の公式ヒアリングに証人として出席し、Epstein files の扱いについて民主党議員から質問攻めを受けた。
キレた相手: 下院司法委員会の民主党筆頭委員(ランキングメンバー)でマリーランド州選出のジェイミー・ラスキン議員。もともと憲法学の教授で弁護士資格も持つ、議会内でも屈指のリーガルマインドを持つ人物。
実際の発言:
"You don't tell me anything, you washed-up, loser lawyer — not even a lawyer."(「あなたに何か言われる筋合いはない、このくたびれた負け犬弁護士め、弁護士にもなれないやつが」)
"not even a lawyer" は事実として完全に間違いなんですが、それが却って「感情的になりすぎて我を忘れてる」感を出してしまっています。
ラスキンが議員として自分の「持ち時間」を行使して質問しようとしているときに、ボンディが遮り、そこにラスキンが「時間を取り戻す(reclaim my time)」と言ったのが引き金になった。
もう一つのキレ先: 同じ場でケンタッキー州選出の共和党議員トーマス・マッシー(エプスタインファイルの公開を推進してきた人物)も攻撃。身内の共和党議員にまで噛みついた。
なぜエプスタインが争点か: エプスタイン関連文書のうち、まだ公開されていない部分(「クライアントリスト」と呼ばれるもの)の扱いがトランプ政権下でうやむやになっているという批判があり、民主党はボンディにその説明を求めた。ボンディは「ダウ平均が5万ドル超えてるんだから文句言うな」という意味不明な反論もして二重に炎上した。
落とし前: ボンディのキレ芸はその場を乗り切るどころか大きく報道され、CNN・BBC・ガーディアン・ニューヨーカーなど主要メディアが一斉に取り上げた。
株価は経済の健全性の指標にならない: ボンディの「株価が上がってるから問題なし」論は経済学的にも的外れ。サミュエルソンが言ったように「株式市場は過去5回の景気後退のうち9回を予測した」。つまりノイズが多すぎて使い物にならない。
しかも株価は他の国のほうが上がってる: ユーロ圏の株価は米国を上回って上昇中。ユーロ高ドル安も加味すると、ヨーロッパのほうが圧倒的に「株高」。「アメリカすごい」の根拠がない。
一般市民が気にするのは物価と雇用: インフレは高止まり、雇用の伸びはしぼみ、求職が難しくなっている。Conference Boardの「労働市場体感指数」labor market differential(職があると感じる人の割合 - 職が見つかりにくいと感じる人の割合)は低迷。これは良い経済でも健全な経済でもない。
トランプ支持率の崩れが早すぎる: YouGovの調査によると、共和党岩盤以外の層はもう「バイデンのほうがマシだった」と判断し始めている。2024年の選挙結果(トランプの一般投票マージンはわずか1.5ポイント、クリントンの2016年より小さい)を「歴史的大転換」と読んだのは完全に誤読。
「低関心層」有権者が離反: 政治的な詳細を知らない「低関心有権者」がトランプの「物価下げます・空前の好景気にします」を信じて票を投じたが、現実がそうなっていないことに気づいて支持が急落している。
2026-02-03 American Democracy Will Not Die in Darkness
「民主主義は闇の中で死ぬ」論はもう古い。 ワシントン・ポストのスローガンにもなったこの考え方——ハンガリーのオルバーンみたいに、メディアを骨抜きにしてジワジワと権威主義を浸透させるやり方——は半分しか正しくなかった。WaPo自体がベゾスに骨抜きにされたのは事実だし、大企業も軒並み膝を屈した。そこまでは予想通り。
MAGAは「賢い独裁者」じゃなかった。 みんな(クルーグマン自身も含め)が読み誤ったのは、トランプ政権がここまで露骨に暴力と権力乱用に走るとは思っていなかった点だ。オルバーンはジャーナリストを逮捕しない。ブダペストの路上に武装覆面の男どもが出没したりもしない。ところがトランプはやってる。
自由民主主義の終わり
が、露骨にやりすぎたせいで猛烈な反撃を食らっている。 ICEの横暴に対する市民の抵抗は1960年代公民権運動以来最大規模。おまけに選挙でもしっぺ返しが来ており、トランプ+17だったテキサスの深紅の選挙区で民主党が15ポイント差で勝った。
Sonnet 4.6.icon
データで見ると、それなりに根拠はある。 ハーバード大学Ash Centerの調査では「2025年の抗議活動はアメリカ史上もっとも地理的に広範」と報告されており、ACLEDのデータでも2025年のデモ件数は2020年BLM以来最多水準(前年比77%増)。また2025年のデモのうち27%が移民関連で、2024年の3%から激増している。ガーディアンも「2017年から2025年にかけて抗議件数133%増」と報じている。
ただし「公民権運動以来最大」は言い過ぎ感がある。 BLMの2020年の抗議活動は推定2600万人参加で「アメリカ史上最大の社会運動」とされており、それを超えたという明確なデータは今のところない。ICE反対抗議はBLMと並ぶかそれに匹敵するレベルには達しつつあるが、「1960年代以来最大」という主張にはBLMという大きな反例がある。
「規模」よりも「粘り強さ・多様性・地理的広がり」に特徴がある。 2025年の抗議活動の際立った点は、従来の都市部・リベラル層だけでなく農村部・共和党地盤にまで広がっていること。この「地理的拡散」という点では確かに過去に類を見ない水準で、クルーグマンが強調したいのもそこだろう
「これ、戦略あんの?」という疑問。 ICEを野放しにして何がしたいのか。「力を見せつければ反対派が黙る」と思っていたのなら完全に外れた。それでもエスカレートし続けているのは、別の策があるからじゃなく、ただ粗暴なだけで自分たちの粗暴さをコントロールできないからだ。市民が原則のために立ち上がるという概念自体が彼らには理解不能なのだ。
問題は「どう終わるか」だ。 中間選挙は青波(民主党大勝)の気配が濃厚。しかしMAGA側は負けたら多くの人間が刑務所行きになるため、権力を手放せない。トランプはすでに「中間選挙の国有化」(=自分の管理下に置く)を言い出しており、結果を認めないのは確実。ICEによる青州の投票妨害、あるいは開票後のクーデター的な事態も否定できない。警戒論者が毎回正しかったのだから、今回も楽観論を信じるべきではない。