EU
「欧州はビビって何もしないのをやめろ。米国“独走”は人口要因込みの錯視だ。超富裕層の暴走は民主主義を壊すから、資産に最低税率をかけて止めろ」
米欧対立(関税・グリーンランド)
EUは「反威圧手段(いわゆるバズーカ)」を持ってるのに、発動に加盟国の“多数”が要るせいで腰が引ける。そこが最大の弱点。
だから「国全体に関税で殴り合い」より、トランプ周辺の金持ち(オリガルヒ)にピンポイントで痛みを入れる方が効く。内側からも割れる。
「米国が欧州を引き離してる」神話の潰し方
GDPの伸びだけ見て“米国強い”と言うのは雑。米国は成人人口が増えてるから嵩上げされる。
見るべきは「成人1人あたりの国民所得」で、2010年以降は米欧ほぼ同じ伸び(だいたい年+1.1%)。
しかも米国は対外純資産が悪化して“借金国”方向に行ってる。GDPじゃなく可処分に効く話だ。
以前の「米国は海外で妙に儲けてる」っぽさは、企業の利益移転(タックスヘイブン)という統計マジックが混ざってた、というオチもある。 統計では、米国が海外に持つ資産(海外投資)から*利子・配当・利益(=対外投資収益)がすごく大きく見えた。
一方で、外国が米国に投資して得る収益は相対的に小さく見えた。
だから「米国は海外でめっちゃ儲けてるのに、外国は米国であまり儲けてない。なんで?」となる。
多国籍企業(例:IT・製薬)が
特許などの知的財産を税率の低い国の子会社に置く
米国の本社・支社がその特許を使うために、子会社へ**ロイヤルティ(使用料)**を支払ったことにする
すると帳簿上
米国の利益は小さくなる(税金を減らせる)
アイルランド等の利益が大きくなる(低税率で課税)
でも実態としては、研究開発・販売・サービスなどは米国側でやってることが多い。
成長の中身:テック礼賛の割に数字が鈍い
2010年以降、米国の生産性伸びは派手じゃない。市場の熱狂と実体の伸びは別。
「すごい革新が来る」話は昔からあるが、少なくともここ15年は“全体”には大して出てない(局地的には出る)。
格差:本丸は“超・極細”の頂上
問題は上位1%とかじゃなく、上位0.0001%みたいな領域(いま19世帯級)が膨張してる点。
その資産規模(国民所得比)が、昔(1980年代)0.3%→いま10〜12%とかいうレベルで、19世帯が国の年産の1割相当を握ってる計算になる。
https://gyazo.com/ed90838c63e2be31a2b00006a971c235
ここまで来ると、富は「便利なお金」じゃなくて「政治権力そのもの」になる。民主主義と衝突するのは当たり前。
象徴例:資産は“仮想”じゃない
「所得が小さい年もあるし富裕税は無理」みたいな逃げは、Elon MuskがTwitterを44Bで買った時点で終わってる。富は必要なときに権力として動員できる。
所得ベースは操作される。だから資産に対して「最低2%」を課す。
すでに所得税などで資産比2%以上払ってるなら追加なし。足りない分だけ払わせる“フロア”方式。
逃げ(国外移住)は、移住後もしばらく課税を追尾(5〜10年など)で潰せる。米国の市民課税ほど極端にせず中間案でいい。
正直な見通し:2%じゃ止まらないが、0→2がいちばん難しい
過去トレンド(超富裕層の資産:年 +10% で増える、平均が年4%)なら、格差“据え置き”でも6%級が要る。2%は「革命」じゃなく「入口」。
でも入口が開けば、次の議論ができる。だからまず0を壊せ、という話。
政治の現実
フランスはメディアが金持ちに握られて増税が通りにくくなってる(劣化が速い)。
世論の支持は厚いのに、推進する政治家が足りない。米国ならBernie Sandersはいるが、Gavin Newsomみたいに乗らない側もいる。 一方でCaliforniaの「一回限りの富豪課税」を住民投票に、みたいな“刺さる設計”も出てきていて、ここが突破口になりうる。
「ヨーロッパはアメリカに遅れてる」論、ちょっと待て。 確かに過去25年、米国の生産性上昇はヨーロッパより速い。でもデータをよく見ると、その差はほぼ丸ごとテック部門だけで説明できる。テック以外では大してひらきがない。
欧州経済を貶めるのも、アメリカが圧倒的に勝ってるという勝利宣言も、どちらも根拠が薄い。 欧州に問題がないとは言わないが、「テック遅れ=欧州終わり」という単純図式は統計リテラシーが低い人間の読み込みすぎである。
テック部門の生産性測定自体、かなり怪しい。 CPUが1000倍速くなっても人間にとって1000倍価値があるわけじゃない。「ヘドニック指数」でなんとか測ろうとしてるが、これが信頼できるかというと相当あやしい。ブラッド・デロングも言ってるが、製造業を含め公式統計は生産性を系統的に過小評価している可能性がある。欧州はテック比率が低いぶん、その歪みをもろに食らってるかもしれない。 仮にテック生産性が本当に高くても、それが米国人の生活水準に直結するとは限らない。 テック企業間に競争があれば、生産性向上は価格低下という形で世界中の消費者に行き渡る。ザッカーバーグが儲かることとアメリカ人が豊かになることは別の話だ。欧州だって反トラスト規制でテック寡占の超過利潤を削って消費者に還元できる。 米国内の格差を見ればわかる。 カリフォルニアは1998〜2024年の実質GDP成長率でテキサスや他の州を圧倒している(BEAデータより)。EU対米国の格差より大きいくらいだ。なのにテキサス人は「なぜうちはカリフォルニアになれないんだ」と嘆いてない。みんな「あれは産業構成の違いだよね」と理解している。ヨーロッパ対米国の比較も、まったく同じ話だ。
ヨーロッパ経済は「過去の栄光の博物館」とか言われてるけど、それは大げさだって前回書いた。ただ、欧州がテック(デジタル産業)でアメリカや中国に大きく遅れをとってるのは事実。
ここで言う「テック」ってのは経済学的な「技術」とは別物で、ムーアの法則の恩恵を受けてきたデジタル産業のこと。太陽光発電とかはいくら進歩してもテックセクターとは呼ばない、という話。 マリオ・ドラギが報告書で「欧州には大規模なテッククラスターがない、だから生産性が低迷してる」と警鐘を鳴らしている。この診断自体には同意。 ただしドラギ報告書には突っ込みどころがある——シリコンバレー級のテッククラスターなんて、アメリカ国内でもシリコンバレー(とシアトル程度)にしか存在しない。全米に均等に存在するわけじゃない。
実際、米国内でも生産性成長率には大きな地域格差があり、西部(ベイエリア・シアトル)とその他の差は、欧州と米国の差に匹敵するほどデカい。なのにそこはあんまり騒がれない。
なぜ騒がれないかというと、「シリコンバレーのイノベーションの恩恵は全米に波及するでしょ」という暗黙の前提があるから。問題はその波及が国際的にも起きるのかどうか、という点。
その答えは「たぶんそう(definite maybe)」——だとすると、「テックで遅れた国は負け」という通説はそもそも間違ってる可能性がある。 この記事は主に欧州の読者向けで、「テック遅れをそんなに気にするな」というメッセージ。逆にアメリカ人には「テックリードで有頂天になるな」という警告でもある。テックリードは社会的・政治的問題も生み出しており、欧州はそれを回避できるかもしれない。
ペイウォール以降では、①経済学者が技術と経済成長をどう考えるか、②国際・地域間の技術格差とその影響、③欧州は本当に負けてるのか・米国は本当に勝ってるのか
タクシーの運転手と話したりフラフラ歩き回った印象では、「ヨーロッパ経済はオワコン」という話はかなり盛りすぎだと感じる。統計が実感と大きくズレていたら疑ってかかるべきだ、というのが持論。
自分が滞在したのはオランダの富裕エリアであり、オランダ自体がヨーロッパでもトップクラスの経済優等生なので、印象が実態よりバラ色に見えているのは差し引いて考えろ、とは自分でも思っている。それでも、肌感覚には一定の価値があると主張する。
数字を掘り下げてみても、「ヨーロッパ経済死亡説」は大げさだという印象を裏付ける結果になった。問題は確かにあるが、多くの人が思っているよりずっとマシな状態だ。
面白いのは、自分が話したヨーロッパ人の誰よりも、自分の方がヨーロッパ経済に対して楽観的だという点。ダメアメリカ人の批判だけじゃなく、ヨーロッパ人自身も自国経済を過小評価している節がある。
有料部分
1. ヨーロッパに関するゾンビ的な神話(しぶとく生き残る俗説)
2. なぜヨーロッパの一人当たりGDPはアメリカより低いのか
3. ヨーロッパが先端技術で遅れているのはなぜか、そしてそれは本当に問題なのか