Dappi
フォロワー数が約17万にものぼる「Dappi」は、自民党や日本維新の会を賛美する一方、政権を追及する野党議員やメディアを誹謗(ひぼう)中傷してきました。平日の日中の投稿が多いことや、国会の情報が詳しいことなどから個人でできるのかと指摘されていましたが、実態は謎でした。
立憲民主党の小西洋之、杉尾秀哉両参院議員が、投稿で名誉を傷つけられたとして損害賠償を求める訴訟準備のために東京地裁に請求していた情報開示が認められ、運営にかかわっていたのは、個人でなく法人だったことが判明しました。
この会社は都内に本店があり、従業員十数人でウェブ・広告制作にたずさわっています。2001年設立で、民間調査会社などによれば得意先は自民党でした。
日曜版編集部は、問題の会社の社長が自民党本部の事務方トップ・元宿仁事務総長の親戚を名乗り、党本部や東京都連に出入りしていたことを突き止めました。複数の関係者の証言や登記簿などで、元宿氏の父方の5親等である事実も確認しました。 社長に政党や国会議員を介して国会通行証が貸与された疑いも深まりました。通行証がなければ普通は開設できない国会内の銀行支店に口座を持っていたためです。
問題の会社は、自民党東京都連から「サーバー代」「テープ起こし代」の名目で13~19年に725万円余りの業務を受注しています。小渕優子・同党組織運動本部長の資金管理団体は09~19年に「ホームページ作成」などの業務で378万円余を支払っています。政党助成金も使われていました。
立憲民主党の小西洋之、杉尾秀哉両参院議員が東京都内のIT関連企業「ワンズクエスト」と社長らに計880万円の損害賠償などを求めた訴訟で、社長らに計220万円の支払いと問題の投稿の削除を命じた東京地裁(新谷祐子裁判長)の判決が、確定した。(デジタル編集部)
10月16日の判決に対し、原告、被告とも期限の30日までに控訴しなかった。
判決で会社ぐるみの投稿とみなされたにもかかわらず、控訴に踏み切ることはなかった。
投稿していた従業員は、社長から厳重注意を受けてから約半年後の2021年11月から3ヶ月間、減給10%の処分を受けている。裁判では、証拠として、基本給が10%減らされた給与明細が提出された。
その給与明細には、月の基本給が110万円と記載されていた。かなりの高給取りだが、肝心の名前の部分は黒塗りになっていた。
新谷祐子裁判長は「投稿者が取締役かどうかは、投稿が業務として行われたか否かの検討に重要」として、黒塗りされていない給与明細の提出を命じた。
しかし、会社側は期限を過ぎても提出しなかった。「個人の特定につながり、嫌がらせが想定される」ことが理由だった。
社長は専務に対して、法廷で投稿者の名前などについて話さないよう口止めもしていたことも明らかになった。
訴状によると「Dappi」の投稿は1日平均6本。平日に集中し、会社休業日の土日に投稿はほとんどなかった。投稿をしていたのは会社からで、少なくとも2020年11月〜21年1月の投稿は、すべて会社のネット回線からだった。他の場所からログインされた形跡もなかった。
判決によると、2020年11月17日から2021年1月27日までの間で、会社のネット回線から合計37回のログインがあり、主に平日に計188件の投稿があったと指摘。
動画付きの投稿は、放送から30分以内で投稿されることもあり、リアルタイムで集中して視聴して編集する必要があるので、他の作業と並行することは難しいことから、「業務時間の大半を記事投稿に充てていた」と認定した。
投稿が継続していたことから、社長らは投稿のために業務時間の大半を費やすことを容認していたといえるので、「社長の指示の下、会社の業務として行われた」と結論づけた。
「ネット右翼のアカウントを継続的にウォッチしてきた」という京都府立大の秦正樹准教授(政治心理学)に聞きました。 立憲民主党の小西洋之、杉尾秀哉両参院議員は20年10月の投稿が名誉毀損(きそん)にあたると主張。投稿に使われたインターネット回線契約者のウェブコンサル会社と社長と専務の役員2人を相手取り、慰謝料880万円の支払いなどを求めて21年10月に提訴した。
東京地裁の新谷祐子裁判長は、投稿者名を開示するよう同社に命じる決定を出した。
会社側はこれまで、投稿したのは従業員だと認めつつ「業務と無関係の私的な投稿」と主張し、会社や役員の関与を否定。投稿者を減給処分にしたことを示す給与明細を地裁に出した。だが氏名部分が黒塗りだったため、「投稿者は役員」と訴える原告側が黒塗りのない明細の再提出を求め、裁判所に文書提出命令を出すよう申し立てていた。
新谷裁判長は決定で「投稿者が役員か否かは、投稿が業務として行われたかの検討に重要」と指摘した。
投稿に自民党の関与があったことを示す証拠は現段階では見つかっていない
そういう直接的な証拠を見つけるのは無理だろう
関係者取材をしている記事
法人登記によれば、同社はサイトの制作やコンサルティング業務、インターネット広告の運営管理業務などを担っている。
民間の信用調査機関によると、得意先の一つは「自由民主党」。政治資金収支報告書からも、同社が自民党都連や小渕優子・衆院議員(群馬5区)の資金管理団体、すでに解散した党支部との間で、サイトや資料制作などの取引をしていたことが裏付けられた。
また、この会社の社長が、「自民党の金庫番」「影の幹事長」の異名を持つ党本部事務方トップ・元宿仁事務総長の親族であることが、BuzzFeed Newsのこれまでの取材で明らかになっている。 自民党本部や元宿事務総長、小渕議員らは「Dappi」への関与を否定している。