COVID-19の集団免疫は達成できない(2022年1月)
2021年2月、フリーランスのデータサイエンティストであるYouyang Guは、自身が開発した評判の高いCOVID-19予測モデルの名前を「Path to Herd Immunity(集団免疫への道)」から「Path to Normality(平常への道)」に変更した。ワクチン忌避、新しい変異株の出現、子どもへのワクチン接種の遅れなどの要因から、集団免疫は達成できそうもないと彼は述べている。Guはデータサイエンティストだが、疫学者の多くも意見は一致している。
テキサス大学オースティン校(米国テキサス州オースティン)のCOVID-19モデリングコンソーシアムで責任者を務める疫学者のLauren Ancel Meyersは、「集団免疫が達成されればパンデミックは永久に根絶できる、という考え方は改められつつあります」と言う。
この考え方の変化はパンデミックの複雑さと対応の難しさを反映したものであり、ワクチン接種が有益だという事実を否定しているわけではない。「ワクチンでウイルスは自然に消滅し始めるでしょう」とMeyersは言う。
しかし、新しい変異株が出現したり、いったん獲得した免疫が減衰したりする可能性もあるため、「数カ月後、あるいは1年後になってもまだ、感染症の脅威と戦い、感染爆発を防ぐ対策を講じなければならない状況は続いているかもしれません」。
はっきりしているのは、ワクチンと過去の感染によってCOVID-19に対する集団免疫を獲得するという希望(当初からその可能性は低かったのだが)が、ほとんど消えてしまったことだ。SARS-CoV-2は、ワクチンによって重症化や死を防ぐことはできても、根絶することはできず、絶滅するどころか、むしろエンデミック(風土病)になるという見解が一般的だ。
2022年はSARS-CoV-2パンデミックに対する防御を強化する態勢が整っている。新しいワクチン、例えばタンパク質ベースのワクチンは、現在のmRNAワクチンよりも低コストで、保管条件もそれほど厳しくないため、より広範な地域で利用できるようになるだろう