相場下落(2019)
8月5日の米国株式市場で、ダウ工業株30種平均(米国を代表する30社の企業の平均株価を指数化した指標)が、前週末比767ドル下がり(下落率は-2.89%)、今年最大の下落幅を記録したことです。下落幅は昨年12月4日(799ドル安)以来、8カ月ぶりの大きさです。
原因
FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、7月末に10年半ぶりに米政策金利の引き下げに踏み切った際、「今回の利下げはあくまでも昨今の不確実性への予防的な措置であり、長期的な利下げサイクルの始まりではない」という趣旨の発言をしました。市場では、FRBの金融緩和策(利下げ)が不十分なものと受け取られ、米国株式市場は下落基調となりました。
過去の「予防的利下げ」後、米長期金利が底打ちし反発した事例が今回も到来するのであれば、利下げ後に長短金利差が拡大し、金融セクターの銘柄にとっては一般的に収益機会が増えることになります
予防的利下げは景況感の悪化や不透明感を払しょくするために行われるもので、これまで1995年と1998年に実施されました。利下げ後は低下していた米国の長期金利が上昇に転じ、米国株式市場と日本の株式市場では株価も上昇しました。 利下げの決定を行うFOMCは、9月17~18日、10月29~30日、12月10~11日と年内に残り3回予定されております。今回の利下げと第4弾の対中関税の発動発表を受けて、8月1日の市場予想では、9月のFOMCで0.25%引き下げられるとの見方が86.5%、年末までにさらに1回以上の利下げがあるとの見方が70.7%となっています。投資家も、依然、利下げ継続の可能性が高いと考えているようです。 対中制裁関税措置の第4弾(米中貿易戦争の再燃)
円高ドル安の進行
FRBによる利下げが、堅調な米景気を支えるための「予防的」なものにとどまらないのではないかという見方が増え、それが日米金利差の縮小観測につながり、円高ドル安が進んだ
原因1の「利下げが不十分」と矛盾しないの?基素.icon
注目
大統領の発言
足元の株式相場下落を受けて、トランプ大統領の発言には要注目です。FRBに対する金融緩和圧力がより一層高まるかもしれません。
また、日銀やECB(欧州中央銀行)の金融政策動向にも注視する必要がありそうです。世界的に緩和的な金融環境が継続すれば、株式市場にとって短期的には追い風となることが見込まれます。