滝崎武光
「自分はカリスマではない」。キーエンスOBたちは、創業者の滝崎武光氏が1980年代にこう口にしていたことを覚えている。
日々の行動の徹底的な可視化と精緻な分析によって多くの営業担当者が成績を上げられる仕組みや、モチベーションを高く保って「当たり前」を徹底する社風など、キーエンスの実像を見ると、「属人化を極力排除したい」という考え方が会社の根底にあることが伝わってくる。それは「企業トップ」にも当てはまる。 ある社員は、「キーエンスでは『誰が言ったか』ではなく『何を言ったか』が重要だ」と話す。フラットな考え方が会社全体に浸透しており、年次や肩書を意識することはほとんどないという。
象徴的なのが役職者の呼び方だ。キーエンスでは社長のことを会社の責任者、「社責」と呼ぶ。「その人が何の責任を持つ立場なのか」を明確にするのが目的であって、「長=一番偉い人」という印象を持たれたくないというのだ。同様に部長に当たる人物は「部責」、機種責任者は「機責」と呼ばれる。