測りすぎ なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?
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2019
著者 ジェリー・Z・ミュラー
アメリカ・カトリック大学歴史学部教授。専門は近代ヨーロッパの知性史、資本主義の歴史。『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙や『フォーリン・アフェアーズ』誌などへの寄稿も多数。著書 『資本主義の思想史——市場をめぐる近代ヨーロッパ300年の知の系譜』(東洋経済新報社、2018年)『測りすぎ——なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』(みすず書房、2019); Adam Smith in His Time and Ours (Princeton University Press, 1995); Capitalism and the Jews (Princeton University Press, 2010)ほか。
訳者 松本裕
多くの人が漠然と感じているのは、業績評価が問題の本質を外れ、文脈を奪い、人間による判断の微妙さを軽視して、システムのメカニズムを知っている者だけの利益になっている、ということだ。本書は、この傾向がどこから来るのか、なぜこの傾向が非生産的なのか、なぜわれわれがそれを学ばないのか、をはっきりと説明している。…あらゆる管理職が読むべき本。 ティム・ハーフォード(エコノミスト。『まっとうな経済学』)
「測定基準の改竄はあらゆる分野で起きている。警察で、小中学校や高等教育機関で、医療業界で、非営利組織で、もちろんビジネスでも。…世の中には、測定できるものがある。測定するに値するものもある。だが測定できるものが必ずしも測定に値するものだとは限らない。測定のコストは、そのメリットよりも大きくなるかもしれない。測定されるものは、実際に知りたいこととはなんの関係もないかもしれない。本当に注力するべきことから労力を奪ってしまうかもしれない。そして測定は、ゆがんだ知識を提供するかもしれない——確実に見えるが、実際には不正な知識を」(はじめに) 仕事に関して数値目標を示す、いろいろな機関をランク付けする、論文の被引用率によって論文の質を評価する、などなどだ。それらの数値を材料として、その機関や個人の評価がなされる。そして、それが客観的で透明性のあるやり方だとされている。そして、それが客観的で透明性のあるやり方だとされている。
本当にそうだろうか? 国立大学は、6年ごとに中期目標・中期計画を立て、その達成度を測るための指標を設定せねばならない。各大学が独自に設定する指標と、文部科学省によって一律に設定される指標とがあり、それらの達成度によって、国立大運営費交付金の額が増えたり減ったりする。 私はこんなことに10年ほど付き合ってきたが、数値目標の設定と達成のための努力とデータ収集は大変な苦労であり、徒労感を覚えることが少なくない。「評価疲れ」という言葉をよく聞くが、現場は本当にその通りなのである。これは私たちが真剣に取り組むべきことなのか。このような評価をすることによって、何が具体的に良くなるのか。疑問が尽きないのだ。 はじめに
Part I 議論
1 簡単な要旨
2 繰り返す欠陥
基準を下げることで数字を改善する
データを抜いたり、ゆがめたりして数字を改善する
不正行為
Part II 背景
3 測定および能力給の成り立ち
実績を測定する──テイラー主義
管理主義と測定
4 なぜ測定基準がこれほど人気になったのか
判断への不信感
専門職批判と選択の神聖化
コスト病
組織の複雑さの中でのリーダーシップ
その抗いがたい魅力
5 プリンシパル、エージェント、動機づけ
ニュー・パブリック・マネジメント
外的報酬と内的報酬
6 哲学的批判
合理主義者の幻想
科学主義
ケドゥリーによるサッチャー批判
説明責任の急速な前進
Part III あらゆるものの誤測定?——ケーススタディ
測定基準を引き上げる──誰もが大学へ行くべきだ
勝者の数を増やせば、勝利の価値が低くなる
低い基準と増える測定
大学の実績を測定しろというプレッシャー
ランキングの激しい競争
学術的生産性を測定する
ランキングの価値と限界
大学を格付けする──スコアカード
測定基準からのメッセージ──大学は金を稼げるようになるところだ
8 学校
問題と、解決策と言われるもの
意図せぬ影響
データを倍増させる
能力給
格差解消への取り組みの代償
9 医療
コスト抑制への経済的後押し
アメリカの医療制度を格付けする
解決策としての測定基準
成功の三つの物語
これらの成功から導き出される結論は?
より大局的な視点──測定基準、能力給、ランキング、成績表
テストケース──再入院を減らす
バランスシート
10 警察
11 軍
12 ビジネスと金融
能力給がうまくいくときと、いかないとき
金融危機
短期主義
13 慈善事業と対外援助
変革的vs測定可能
補説
14 透明性が実績の敵になるとき——政治、外交、防諜、結婚
親密さ
政治と政府
外交と諜報活動
Part IV 結論
15 意図せぬ、だが予測可能な悪影響
測定されるものに労力を割くことで、目標がずれる
短期主義の促進
従業員の時間にかかるコスト
効用の逓減
16 いつどうやって測定基準を用いるべきか——チェックリスト