動きの視覚認知
動きの視覚認知
私たちが見る世界は動きに満ちている。
外界の事物自体も動くが、私たち自身も動きを止めることはない。
いずれにしても網膜像には動きを伴った変化が生じる。
また、外界や私たち自身が動いているといっても、必ずしもすべて知覚するわけではない。
対象の移動が遅すぎても速すぎても動きを感じることはできない。
動きの見えは、対象の性質や動いている対象の周辺の環境によっても変化する。
以下のような視覚的な運動情報の処理にはV5が関与していることが知られている。
この皮質部位が損傷してしまうと, 皮質性運動盲になることがある。
この障害では, 物の動きを知覚することがで きなくなってしまい, コマ送りのように運動情報が断片化されて見える。
●ブラウン効果
運動領域と対象の大きさをともに2倍にすると, 見かけの速度は2分の1になり、
狭い視野を動くものが広い視野を動くものより速く見えるようになる。
また, 周囲 の環境が暗いときは明るいときに比べて, 1点を凝視しているときは
対象を追視しているときに比べて, 動きは速く見える。
また、実際には動いていないものが動いて見えることもある。
●仮現運動
空間的に離れ た2つの図形を一定の時間間隔をおいて提示すると,2つの図形をつなぐよう な連続した運動が知覚される。
●仮現運動の知覚
対象物の位置が 画像内で少しずつずれている静止画像を連続して多数見ることによって、 仮現運動と同じように動きを感じることができる。
* 約 30 ミリ秒以下では短すぎて2光点の同時点滅が知覚され、
* 約60ミリ秒くらいは実際運動の知覚と変わらない。
* 約200ミリ秒以上は光点の点滅が知覚され運動は知覚されなくなる。
提示条件が適当であれば本当に動いている刺激と同様の応答を示す。
●誘導運動
風に流される雲の動きによって夜空に浮かぶ月が動いて見えるように,
対象間の物理的運動関係にかかわらず
「取り囲むもの」と「取り囲まれるものの関係が成立するとき,
取り囲まれているものが動いて見える現象
●視覚性自己誘導運動
列車の中で隣の列車が動き出すと自分が乗っている列車が逆方向に動いているように感じられることは、視覚的運動が観察者の身体の位置や方向に影響を与えることを示す。