リーン・スタートアップ
シリコンバレー発 注目のマネジメント手法
リーン・スタートアップとは、新しい製品やサービスを開発する際に、作り手の思い込みによって顧客にとって価値のないものを作ってしまうことに伴う、時間、労力、資源、情熱のムダをなくし、時代が求める製品・サービスを、より早く生みだし続けるための方法論です。
■新しいことを始める人すべてが起業家
著者自身が、起業で失敗を重ねる過程で得た考え方ですが、それは会社を興す人にかぎらず、企業や組織のなかであっても新しい事業を始めようとする人にも役立ちます。
本書のなかでも、「スタートアップとは、不確実な状態で新しい製品やサービスを創り出さなければならない人的組織であり、そこで働く人は皆アントレプレナー(起業家)である」と語っています。
■「構築―計測―学習」のフィードバックループ
リーン・スタートアップは具体的には、「構築―計測―学習」のフィードバックループを通して、まず要となる仮説に基づいて実用最小限の製品(MVP)をすぐに作って、実際に顧客に使ってもらった実験結果から、成長につながる価値を学ぶ(検証による学び)という工程をくり返します。
その中で、仮説に対して結果が違ったら、そのまま進むか、あるいは方向転換(ピボット)するかを選びます。
その判断基準も、いっときの成果ではなく、事業として継続できるかどうかを見る、著者ならではの鋭い指摘が示されています。
■リーン・スタートアップの本質は、不確実で先が読めない時代への挑戦
本書の中でたびたび登場する言葉が「不確実な状況」であり「価値」です。
著者はロケットの発射のように綿密な計画を立て、わずかでも仮説が間違っていたために悲惨な結果を招くよりも、自動車の運転のように状況に応じで進路を変えながら進んでいく操縦法が起業においては重要であると説きます。
先の見えない不確実ないまの時代、失敗をくり返さなければすばらしい新製品は開発できず、価値を正しく見極め、失敗をムダにしないためのアプローチがリーン・スタートアップです。
masuyama13.icon 大事だと思ったこと
構築 - 計測 - 学習のフィードバックループに要するトータルの時間を最小にする
スタートアップがやるべきことは、実験を行って自分たちの条件に適したやり方をみつけること
実験の目的は、ビジョンを中心に持続可能な事業を構築する方法を明らかにすること
価値とはモノを作ることではなく、検証を通じて持続可能な事業の構築方法を学ぶこと
顧客が本当に欲しがっているのはどういう製品なのか
自分たちの事業はどのような形で成長するのか
誰が顧客なのか
どの顧客の意見には耳を傾け、どの顧客の意見は無視すべきなのか
フィードバックループをもっとも速く、かつ最小限の労力で回せる方法
学びのプロセスを始めることが目的
基礎となる事実仮説を検証するためのもの
MVPを作るときは「求める学びに直接貢献しない機能やプロセス、労力はすべて取り除く」
アーリーアダプターにとって一番の関心事は、新しい製品や技術をいち早く使ってみること
やらなくても学びはじめられることはどれほど重要に見えてもすべて無駄
顧客は、自分たちが何を望んでいるのかわかっていないことが多い
誰が顧客なのかがわからなければ、何が品質なのかもわからない
顧客が気にするのは、自分にとっていいか悪いかだけ
作るのにどれだけ時間がかかったかなど関係ない
バッチサイズは小さく
問題を早期発見できる
無駄を最小限に抑えられる
犯人探しになってはいけない
無駄の原因は効率が悪いことではなく、まちがった仕事をしていること
メモ
リーン・スタートアップ方式
1. アントレプレナーはあらゆるところにいる
2. 企業とはマネジメントである
3. 検証による学び
4. 構築 - 計測 - 学習
5. 革新会計(イノベーションアカウンティング)
ビジョン
リーン・スタートアップのルーツは、トヨタのリーン生産方式
作業員が持つ個人的な知識や創造性の活用
バッチサイズの縮小
ジャストインタイムの製造と在庫管理
サイクルタイムの短縮
スタートアップの目標は、できるかぎり早く、作るべきモノ - 顧客が欲しがり、お金を払ってくれるモノ - を突きとめること
リーン・スタートアップとは、サイクルタイムの短縮と顧客に対する洞察、大いなるビジョン、大望とさまざまなポイントに等しく気を配りながら、「検証による学び」を通して画期的な新製品を開発する方法
構築 - 計測 - 学習(Build-Measure-Learn)というフィードバックループをハンドルとして継続的に調整を行う
ピボット(方向転換)をいつすべきなのか
辛抱すべきなのか
スタートアップの目的地 - ビジョン(vision)
ビジョンを実現するために戦略(stragtegy)を採用する
ビジネスモデル、製品ロードマップ、提携企業や競合他社の視点、予想される顧客など
戦略から生み出される成果物 - 製品(product)
「最適化」のプロセスで変化していく
エンジンのチューニング
起業とはマネジメントである
スタートアップとは、とてつもなく不確実な状態で新しい製品やサービスを創り出さなければならない人的組織である
部分を集めた合計を超えるもの
製品は、顧客となる人々にとっての価値を生みだすものすべてを指す
大企業は持続的イノベーションを得意としており、破壊的イノベーションは不得意
イノベーションはボトムアップで進む
検証による学び(validated learning)
誰も欲しがらない製品を作ってしまうという失敗
早い段階で顧客の声を聞く
価値と無駄
我々の努力のうち価値を生みだしているのはどの部分で無駄なのはどの部分なのか
リーンな考え方における価値とは、顧客にとってのメリットを提供するもの
それ以外はすべて無駄
作る前に学べなかったか?
実際に作る前に機能の提案だけを行い、興味を惹かれた人にはダウンロードのチャンスを提供するとか
スタートアップにとって、学びは進歩に欠かせない
顧客の望みを学ぶためにどうしても必要なもの以外の努力はなくてもいい
現実の顧客から集めた実測データを基礎とする必要がある
顧客が本当に願っているものは何か
スタートアップが行うことは、「戦略を検証する実験」
実験の目的は、ビジョンを中心に持続可能な事業を構築する方法を明らかにすること
実験ならすぐに始められる
小さくスタートする
価値仮説
顧客が使うようになったとき、製品やサービスが本当に価値を提供できるか否かを判断するもの
成長仮説
新しい顧客が製品やサービスをどうとらえるかを判断するもの
アーリーアダプターは失敗に寛容でフィードバックも返してくれることが多い
コンシェルジュ型MVP(Minimum Viable Product)
フィードバックや学びを得たら、それをもとにまた実験を行う
実験は最初の製品
コダック社の例
1. 我々が解決しようとしている問題に消費者は気づいているか?
2. 解決策があれば消費者はそれを買うか?
3. 我々から買ってくれるか?
4. その問題の解決策を我々は用意できるか?
仮説と検証
計画というのは長期にわたり安定した運用実績があってはじめて効果を発揮する
スタートアップには不向き
舵取り
スタートアップとは、アイデアを製品に変える触媒のようなもの
フィードバックの種類
定性的なもの(何が気に入って何が気に入らないか)
定量的なもの(何人が利用して何人が役に立つを思ったか)
構築 - 計測 - 学習のフィードバックループに要するトータルの時間を最小にする
スタートアップがやるべきことは、実験を行って自分たちの条件に適したやり方をみつけること
成功と失敗を分ける鍵は、計画のうまくいっている部分と道を誤っている部分をみつけられるだけの先見性と能力、ツールをアントレプレナーが持っており、戦略を状況に順応させられるか否か
現地・現物主義
自分で行って自分の目で確かめること
フィードバックループをもっとも速く、かつ最小限の労力で回せる方法
学びのプロセスを始めることが目的
基礎となる事実仮説を検証するためのもの
アーリーアダプターにとって一番の関心事は、新しい製品や技術をいち早く使ってみること
やらなくても学びはじめられることはどれほど重要に見えてもすべて無駄
顧客は、自分たちが何を望んでいるのかわかっていないことが多い
動画型MVP
ドロップボックス
コンシェルジュ型MVP
最初の顧客は一人だけ
顧客が増えると個別対応が難しくなる
システム化
誰が顧客なのかがわからなければ、何が品質なのかもわからない
顧客が気にするのは、自分にとっていいか悪いかだけ
作るのにどれだけ時間がかかったかなど関係ない
MVPを作るときは「求める学びに直接貢献しない機能やプロセス、労力はすべて取り除く」
革新会計
ベースラインの設定
エンジンのチューニング
ピボット
アジャイルのプロセスに学習を組み込むと生産性が下がる可能性がある
機能追加と数字変化の因果関係
スプリットテスト
かんばん
バックログ、構築中、構築完了、検証中
3つの「しやすさ」
行動しやすさ
因果関係がはっきりしていること、再現性があること
わかりやすさ
レポートはできるかぎりシンプルに、アクセスしやすく
チェックしやすさ
ピボット(方向転換)
方向転換するか辛抱するか
定期的に検討すべき
スピードアップ
どの活動は価値を生んでおり、どの活動は無駄なのか
価値とはモノを作ることではなく、検証を通じて持続可能な事業の構築方法を学ぶこと
顧客が本当に欲しがっているのはどういう製品なのか
自分たちの事業はどのような形で成長するのか
誰が顧客なのか
どの顧客の意見には耳を傾け、どの顧客の意見は無視すべきなのか
バッチサイズ
ひとまとめに処理するバッチサイズを縮小したほうがいい
ニュースレターの発送作業の例
一つひとつ完成させる方が速い
段階ごとにまとめて作業する方法では、途中まで処理した封筒を並べたり積み重ねたり動かしたりしなければならない
繰り返すほど作業に習熟するはずという思い込み
実際には、全体的なパフォーマンスに比べて部分のパフォーマンスは影響が小さい
問題があった場合に1個目で気づける
問題を早期発見できる
バッチサイズを小さくしておけば、後々無駄にしたと判明する時間やお金、労力を最小限に抑えられる
ジャストインタイムスケーラビリティ
成長
持続的な成長とは
過去の顧客の行動が新しい顧客を呼び込む
成長のエンジン
口コミ
製品の利用に伴う効果
有料広告を通じて
購入や利用のリピートを通じて
3種の成長エンジン
粘着型
新規顧客の獲得速度が解約速度を上回れば成長する
ウイルス型
ウイルス係数の改善に注力
支出型
顧客あたりの売り上げを増やすか、新規顧客の獲得コストを減らすか
順応性の高い組織(adaptive organization)
状況の変化に合わせてプロセスとパフォーマンスを自動的に調整する組織
「5回のなぜ」で真因をつかむ
技術的に見える問題も、根底には人的問題が隠れている
「5回のだれ」はNG
ミスが起きるのは、ミスが簡単に起こる状況をつくった全員の責任
初回はどんなミスに対しても寛大に
システムに問題があってミスが起こるのであって、人間に問題があってミスが起こるのではないことを忘れない
同じミスは絶対にくり返さない
イノベーション
破壊的イノベーションに必要な3つの組織的特質
少ないが確実に資源が用意されていること
自分たちの事業を興す権限を有していること
成果に個人的な利害がかかっていること
無駄の原因は効率が悪いことではなく、まちがった仕事をしていること
やってはいけないことをすばらしい効率で行うほど無駄なことはない(ピーター・ドラッカー)