ジマンパワー
自慢や自己満足感はWebに必須
多くの趣味は自己満足したい気持ちや自慢したい気持ちが原動力となって成立しているように思われます。山に登るのが楽しい理由はいろいろあるでしょうが、美しい景色を見られる喜びに加え、苦労して登りきったことに自己満足したり、大変な山に登ったという自慢話ができるのも理由のひとつでしょう。 写真を趣味にしている人は沢山いますが、自分が撮った美しい写真を見て自己満足できることや、それを他人に見せて自慢できるということが大きな動機になっています。このように、自己満足したいという気持ちと他人に自慢したいという気持ちが満たされるような趣味は流行しやすいといえるでしょう。 http://gyazo.com/9c08e4207ec149ca68027e3d8baa243a
他人に認めてもらいたいという自己承認欲求は人間の大きな欲求のひとつです。自己満足と自慢の両方が満たされない場合は片方だけでもかまいません。自己満足が難しい分野の趣味の場合、他人に自慢することによって楽しみを増やすことができます。ピアノや華道のような稽古ごとでは「発表会」が行なわれるのが普通です。発表会では自分の技を他人に見てもらうことによって批評をあおぐという意味もあるでしょうが、自慢大会という意味の方が大きいと思われます。ひとりでピアノを弾くだけで誰もが充分自己満足できるのであれば、自分が弾く曲を他人に聞かせる必要はありませんから、ピアノ発表会の必要性は少ないでしょうが、実際は、先生に指定された練習曲がつまらなくて自己満足することができないから、発表会のような機会で腕を自慢する必要があるのでしょう。このように、自己満足(自満)や自慢を支援する「ジマンパワー」は趣味にとって非常に重要だと思われます。 ネット上のジマンパワー
良質のソフトウェアを無償で共有するというオープンソース運動は、昔は理解されないことが多かったようですが、近年は世間で広く受け入れられるようになり、ビジネスとしてもすっかり定着しています。全世界の人々が無償で時間をかけてWikipedia記事の編集を行なっています。見返りを期待せずに他人のために親切な行動をとることはなかなかできることではありませんが、その行動によって自分のジマンパワーが発揮できるのであれば話は違います。自分が書いたソフトウェアが世界中で愛用され名声が高まるのであれば、良いソフトウェアを書いたという自己満足感も得られますし、ひそかに自慢することもできます。ソフトウェアを無償で配付するという行為によって多くの稼ぎを得ることはできないかもしれませんが、オープンソース活動はジマンパワーの発揮には最高だということが成功の大きな理由のひとつだと考えられます。 ユーザ間で情報を共有したりユーザの力をあわせて情報を構築したりするという、いわゆるWeb2.0的なサービスが世の中に沢山存在しますが、人気のあるサービスはジマンパワーを充分に発揮できるようになっているようです。自分にメリットがない場合、手間をかけて不特定多数に対して有用な情報を提供する親切な人は多くありませんから、情報共有サービスを流行らせるためには、情報提供することによってユーザのジマンパワーを発揮できることが非常に重要だと考えられます。実際、次のような多くのサービスにおいてジマンパワーは有効に活用されています。 ブログ
ブログを書くという面倒な行為が流行るのはジマンパワーを存分に発揮できるからでしょう。頭が良い人であれば、斬新な発想を公開して自慢することにより多数の人間に自分をアピールすることができます。普通の人が面白いものを見たり美味しいものを食べたりしたといった日常的な行動も、ジマンパワー発揮の種にすることができます。多くの人の心の中に隠れていたジマンパワーを表出させるメディアとしてブログが人気を呼んでいるのでしょう。
SNS
mixiやFacebookのようなSNSもジマンパワーの発揮に有用です。日記を書くことによってブログと同じようにジマンパワーを発揮することができますし、友達が多いとか有名人と友達だとかいうことでも発揮できます。様々なジマンパワーを複合的に発揮できるところがSNSの人気の秘密なのかもしれません。 https://gyazo.com/53c8df7b0e33532b182e93e99134e158.png
友達を自慢してるところ
プログラミング
オープンソース活動以外でもプログラミングに関するジマンパワーを発揮することができます。たとえば「どう書く?.org 」というサイトでは、様々なお題を解くプログラムを投稿してプログラミングの腕を競うことができます。やり方によって同じ問題を上手に解くことも下手に解くこともできるわけですが、ジマンパワーを発揮したいハッカーが競って技術を投稿すれば、一般人のプログラミングレベルも向上する可能性があるでしょう。ジマンパワーを発揮できる各種のプログラミングコンテストも最近人気があります。 私が運営している「本棚.org」というサイトでは、ネット上に作成した「本棚」に書籍を登録することによって書籍を管理できるようになっています。本棚.orgは書籍管理に便利ですが、そもそも本棚.orgにデータが集まる理由は単に便利だからというだけでなく、ジマンパワーの発揮場所として適しているからだと思われます。 https://gyazo.com/7256c736c997b101d7a17cc12ca86329.png
本棚.orgで蔵書自慢
これらはジマンパワーがうまく発揮できているサービスの例ですが、ジマンパワーを発揮できないサービスはうまくいかない可能性が高いと思われます。私は以前、位置情報や店情報を共有するために本棚.orgと似た「地図帳.org」というサイトを作ったことがあります。レストランや観光地のような情報の共有はとても有用なのですが、このような情報を投稿してもあまりジマンパワーを発揮できないため投稿が集まらず、結局このサービスはあまり流行りませんでした。Webサービスで情報を共有しようという場合、便利で面白くなければならないのは当然ですが、それだけでは不充分であり、ジマンパワーを発揮できるような仕組みがなければ駄目だということを痛感しました。Web2.0的サービスを流行らせるためにはジマンパワーの活用が最も重要なのかもしれません。サービスが有用かどうかよりも、ジマンパワーを発揮できるかどうかをまず検討するべきなのでしょう。