『時間と体重と食欲とカロリー収支のダイエット理論』
タイトル
時間と体重と食欲とカロリー収支のダイエット理論
旧タイトル
体重を減らすには食事を抜くしかないのでダイエットはマインドが9割!
著者
まんぷくいちろう
↓どんな本なのか説明↓
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第一章
第 1 章
はじめに
まず、本書の特徴を 7 つ説明します。
本書の特徴 1 目的
この本では、太っていると判定される大人の方を対象に、体重を本人の目標まで落
とす方法を考えていきます。太っているの定義は、外国ではなく日本での定義に従い
BMI25 以上となります。
本書の特徴 2 提案する方法
結論を端的に言うと、「食べないと(食事回数を減らすと)体重減るよ」ということ
が書いてあります。具体的には、毎日頻繁に体重を計りながら、適宜食事を抜く減量
法(一日一食法など。一日二食で体重減るならそれでもかまいません。)の組み合わせ
が一番のおすすめです。もちろん、一日三回食べて、毎食ごとの摂取カロリーを小さ
くすることでも体重は減少しますが、それが難しい人を読者として想定しています。
毎日体重を計る「計るだけダイエット」は NHK のためしてガッテンで有名になっ
一日一食法は 2012 年頃に南雲吉則氏が提唱されていたのがよく知られています。2 しかし、後で説明しますが、加藤寛一郎さんという方が南雲氏よりも早い 2002 年と
いう時期に、合理的な形での一日一食法の本を書いていました。3 村上宣寛氏の『あざむかれる知性』によると、現在、二つの肥満仮説があり、カロ
リー説とホルモン説があります。カロリー説は、摂取カロリーが消費カロリーを上回
ると、オーバーしたカロリーが脂肪に置き換わるという仮説です。ホルモン説(炭水
化物説)は炭水化物(糖質)摂取によってインスリンが放出されて脂肪細胞が刺激さ
れて燃焼が妨げられ、インスリン濃度が高い状態が続くという説です。よって糖質を
制限するだけで痩せるとします。(村上宣寛『あざむかれる知性』)4 本書のスタンスはカロリー説です。摂取カロリーを消費カロリーよりも少なくする
ことで、足りない分のカロリーで脂肪を燃焼させようという考えです。最近人気の
減ってきた考え方ですが、コスト面などから見て優位性の高いのはこちらだと考えて
います。
減量を実現するための手段として、「計るだけダイエット」と「食事抜き減量法」と
いう方法を提示します。また、減量を原理的な面から考察しながらガイドしていきた
いと思います。
本書の特徴 3 避けたいバグリスト
ある対象に対する不満点をとにかくリストにしてアイデア開発をする「バグリスト」
という方法が『アイデア大全』という本に紹介されています。5 そこで私的に世間に 流通しているダイエット本の欠点をバグリスト的に挙げると
• エネルギー保存則(カロリー収支)を重視していない
• カロリー量と栄養の質の混同
• 運動の過大評価
• 筋肉への大きすぎる期待
• 著者の経験の過度の一般化
• 時間要因の無視
• 特定の食品の推奨または禁止などのフードファディズム
• 変な文明論
• 参考文献を記載しない
などがあります。(ちなみに、「フードファディズム」とは、高橋久仁子氏の『「食べ
もの情報」ウソ・ホント』という本によりますと、
1. 食品や食品成分に “薬効” を期待させ、“治療” に使う
2. 万能薬的効能をうたう目新しい「食品」を流行させる
3. 食品を非常に単純に、体に “いい”“悪い” と決めつける
上の挙げたバグリストに陥らないように意識しながらダイエットを解説していきた
いと思います。本書では個別食品を推奨したり禁止したりはしません。根拠の薄い健
康法や怪しい文明論なども提示しません。本書の提案する体重測定と食事を抜く方法
の組み合わせは、あくまで太っている人が目標に到達するまでの手段と位置付けます。
目標に到達した後は、食事を抜くのはやめて、痩せた後の体重を維持できる食べ方を
すればよいでしょう。しかし、それは太っていた頃の食事よりはだいぶカロリー的に
控えめなものになるでしょう。本書によって、自分の体重にコンプレックスをもって
いる方の減量がうまくいく手助けができればと思います。
本書の特徴 4 EBM を尊重するがそれ以外も重視
本書は、いわゆる EBM(根拠に基づく医療)などから得られた知見を重視します
が、メタ論文(あるテーマに関する論文を収集して評価を行い一定の結論を出した論
文)でこういう結果が出たからこの主張が正しいというような話の進め方はなるべく
しません。参考程度にとどめます。
理由は、私にはメタ論文のそれぞれを適切に評価する力がないからです。本書では
私なりの根拠を提示しながら話を進めますが、どちらかというと物理学や経済学の理
論とか、初歩的な栄養学や、ある個人(専門家・非専門家含む)の意見などの方が根
拠としては多く使われています。それだけからでも、それなりに興味深い主張を作り
出せることを示せればと思います。
本書の特徴 5 シンプルさを重視
本書の旧タイトルは『体重を減らすには食事を抜くしかないのでダイエットはマイ
ンドが9割!』というものでした。
このタイトルは、『人生がときめく片付けの魔法』(近藤麻理恵)7 の一節と、『脳 を鍛えるには運動しかない!―最新科学でわかった脳細胞の増やし方』(ジョン・レイ
片づけ本の傑作であり、世界的な大ヒットとなった近藤麻理恵さんの『人生がとき
めく片付けの魔法』には、以下の様な文章があります。
「なぜレッスンの卒業生さんが、本当の意味での「片づけられる人」に変わって
いけるのだと思いますか。それは、私のお伝えしている片づけ法が、たんなる
片づけノウハウではないからです。片づけという行為自体は、あっちのモノを
こっちに移動する、こっちのモノをあの棚に収納するという単純作業の連続で
す。行為だけで見れば、小学校一年生でもできることのはず。それができない、
もしくは片づけても元に戻ってしまうというのは、そもそも習慣を継続できな
かったり、意識の問題だったり、つまり精神面(マインド面)に原因があるの
です。
つまり、「片づけはマインドが九割」なのです。これを抜きに、どんなにモノを
たくさん捨てたり、収納に工夫を凝らしたりしたところで、元から片づけが得
意な人以外は、いつか必ずリバウンドがやってきます。
では、正しいマインドを身につけるにはどうしたらよいのか。これを解決する
方法はただ一つ。逆説的ですが、正しいノウハウで片づけることです。ですか
ら、これからお伝えする片づけ法は、いわゆる物理的な整理収納ノウハウでは
なく、片づけにおける正しいマインドを身につけて「片づけられる人」になる
ための方法だということを心に留めておいてください。」(近藤麻理恵『人生が
本書に引きつけて言えば、減量とはそれまでより日々少なく食べることを繰り返す
だけです。だれでもできます。
しかし、「一日必ず三食を食べるのが正しい食べ方である」、「健康的な食事をしなが
ら毎日運動をすればかならず痩せる」など、太っている人にとっては必ずしもふさわ
しくないアドバイスが世の中にはあふれています。
世の中のダイエット言説から、太っている人の減量に相応しくない情報を排除し、
本質のみを抽出すれば、シンプルな原則が浮かび上がってきます。
そのシンプルな原則に基づいた正しいマインドを持って減量を継続すれば、目標体
重までの減量は必ずしも難しくありません。本書では単なるノウハウではない、減量
の継続につながるような知識をお伝えしたいと思います。
本書の特徴 6 ダイエット本のパターンと本書が依拠す
る本
本書の立場を明確にするため、世の中にある減量の方法のパターンを考えたいと思
います。
後ほど各ダイエット本の分析パートを提示しますが、各ダイエット本の前提となる
考えの大きな分岐としては
1. 動機に関する記述(著者の動機・読者の動機)
2. カロリー量を一番重要だとするか、食品の選択を一番重要だとするか
3. 個別食品の推奨・禁止をするか
4. 食事を抜くこと(断食)を肯定するか、否定するか、断食には触れないか
5. 食欲への対処法
6. 運動の推奨の仕方(運動全否定はほぼないので、筋トレ(無酸素運動)か、有
酸素運動か、またはその勧め方の強さ)
7. ダイエットを継続するためのコツ
8. その他
があるかと思います。言い換えると
1. 本を書いた動機、読者がやせるべき理由
2. 減量のメカニズムの理解
3. 個別食品の推奨・禁止の有無
4. 断食への見解
5. 食欲の対処法
6. 運動への見解
7. 継続法
8. その他
になります。
特に「8 その他」に取り上げた内容については、著者の独自見解であることが多く、
よって実証データに基づかないことが多いことが多いです。データに基づかないこと
が多いですが、すべてではありません。断食で病気が治るなどは、根拠がないと個人
的に思います。
減量のメカニズムへの理解が食品の選択である場合、必ず個別食品の推奨・禁止を
伴いますので、2 と 3 の項目はきちんと別れていません。しかし、カロリー量を重要
とする場合は、個別食品を推奨・禁止する論者としない論者がいます。というわけで、
2 と 3 を分けました。
私が好きなのは、
1. 動機に関しては省略
2. カロリー量(カロリー収支)を一番重視する
3. 個別食品を禁止・推奨しない
4. 食事を抜くこと(断食)を否定しない
5. 提唱する食欲の抑制方法が自分に適用可能(よく噛めというのは個人的には
無理)
6. 運動を勧めるとしても散歩などの有酸素運動程度
7. 継続に関する tips が実行しやすい
8. 根拠のなさすぎることを主張しない
という特徴を持った本です。書名をあげると、『一日一食断食減量道』です。
本書も上記の立場で書かれています。本書で提示される食欲抑制法が読者のあなた
に適用可能かは、読んで判断いただければと思います。
本書の特徴 7 他の方法を尊重し、他の方法へのガイドも
行う
最後に、私は本書で提示する方法が絶対的に正しいとは主張しません。よりいい方
例えば、今後副作用のあまりない食欲抑制剤などが開発され、医師に処方を受けれ
ば誰でも手に入るようになった場合、本書の情報のかなりの部分が不要になったりす
る可能性はあります。また、減量に関するもっと適切で有効な考え方が生まれた場合、
それを無視するわけにはいかないでしょう。現状では、本書に記述した方法がそれな
りに多くの人に効果的だと考えていますので、みなさんにそれをご提示したいと思い
ます。
また、目標体重まで落とす方法は唯一の正解があるものではないと考えております
ので、他のダイエットメソッドへのガイドも行います。
第 6 部では、世間で出版されている他のダイエット本を取り上げて、一定の基準で
分析しています。本書をおおまかに読んで、その分析も読めば、読者のあなたにあっ
たダイエット法を自分で選べるようになり、最終的には自分にあった方法を開発する
それでは、よろしくおねがいします。
まとめ
1. 本書は、太っている人が目標体重まで落とす方法を考えます。
2. 計るだけダイエットと一日一食法(食事回数を減らす)を推奨します。
3. 巷のダイエット本のバグリストを意識しています。
4. EBM は重視しますが、論文がこう言っているからこうだみたいな主張は可能な
限りしません。ですが、なるべく私なりの根拠のある形で話を進めていきます。
5. 太っている人のための、シンプルな減量の原則をお伝えします。
6. ダイエット本にはパターンがあります。本書は『一日一食減量道』と似た主張
をします。
7. 本書の主張を絶対視せず、他の方法へのガイドも行います。
第 2 章
「このダイエット方法で健康にな
れる」とは主張しません
ダイエット本は、痩せると健康になると主張する本がよくあります。しかし、本書
は、特に痩せると健康になるとは主張しません。
肥満のパラドックスと言いますが、少し太っていたほうが死亡率が低いという研究
もあります 11。従来は BMI22 くらいが一番死亡率が低いと思われていましたが、実 はもっと太っている時の方が死亡率が低いのではないかというデータがでてきました。
具体的には BMI25 より大きいくらいのときです。この場合の死亡率というのは、ある
時点から一定期間の間(5 年とか)の死亡率の高低をいいます。もちろん人間は全員死
にますので、人生で見た場合の死亡率は 1(100%) ですが、短く区切ることで差を見出
すわけです。肥満のパラドックスについては、まだ論争がある状態だと思います 12。 このことから、痩せることには美容的なメリットもあるかもしれませんが、健康的な
デメリットもあるかもしれません。
本書は、あなたに健康を売るつもりはありません。あなたの現在の体重について私
は知りません。今よりも体重が減ることが嬉しいと思っている人に、そのための再現
性のある方法を提示するというのが本書の目的です。健康に関しては、総合的に個人
の健康診断などに基づき、医師と相談しながら考えることを推奨します。
まとめ
健康は売りません。
第 3 章
免責表示
本書の方法を試して体調が悪くなった場合はすぐにやめてください。持病のある方
は本書の減量法を医師の指導なしに行わないでください。本書の方法を行った結果の
責任は読者に帰属するとします。読者の皆さんが本書の情報を用いて行った行為によ
るいかなる不利益も筆者は責任をとることができません。
第 4 章
女性の方に(男性の方にも)
筆者は男性ですが、女性の場合は無理な減量が摂食障害につながる可能性が男性よ
りも高いです。摂食障害の有病率の 9 割は女性です。13 それ以外にも、極端な減量が月経に悪影響を与える可能性があります。本書は継続
的に食事を抜く減量法を推奨していますが、女性の場合は慎重に無理のない範囲で試
してください。男性の場合も、少しずつ試していくなど、無理のない範囲で行ってく
ださい。
また、妊娠している・妊娠する予定がある方は、本減量法を行わないでください。