【具体例③】酸性?中性?アルカリ性?身の回りの物質の性質をしらべて発表しよう
生徒は色が変わる実験が大好き。スーパーに売っている食品を使って,身の回りの物質の性質を調べてみましょう。
同期型(ライブ配信)授業でも,非同期型授業でも実践可能な事例です。各学校の実情に応じて,適宜改変してください。
<学習目標>
身近にあるものにも,教科書に出てくる物質と同じように酸性・中性・アルカリ性などの性質があることに気づき,理科的な関心を深める。
あじさいの花(正確にはガクに当たる部分)の色と,土のpHの関係性を調べる。
<準備物>
教員:①むらさきキャベツの煮汁,②試験管,③スポイト,④ねるねるねるねのお菓子(ぶどう味),⑤アジサイの花と土(赤,青それぞれの花が生育している土壌),⑥希塩酸,酢酸,食塩水,重曹水,水酸化ナトリウム水溶液,⑦プラスチックコップ,⑧割りばし(薬さじ)
生徒:iPad等の端末,ガラス容器(コップなど),ミニスポイト(100円ショップで入手可能),上記①,上記④,上記⑤,上記⑦,上記⑧
<使えるソフト・アプリ>
教員:ロイロノート,Zoom
生徒:ロイロノート,Zoom
<具体的な方法>
まず,むらさきキャベツの煮汁がpHによってどのように変化するかを確認する。
➡︎教員があらかじめ用意しておいたむらさきキャベツの煮汁に,強酸性(希塩酸),弱酸性(酢酸),中性(食塩水),弱アルカリ性(重曹水),強アルカリ性(水酸化ナトリウム水溶液)の水溶液をそれぞれ加え,色の変化を見せる。(Zoom上であらかじめ撮影して短く編集した動画を見せるorLiveで見せてもそれほど時間はかからないかもしれない)
➡︎生徒は,それぞれの液性のときにむらさきキャベツ液が何色になるのかを考え,ロイロノート(キャンディチャート)で各自まとめる。(2分)
➡︎教員は各生徒をブレイクアウトルームで小グループに分け,生徒は各自の意見を交換する。(3分)
➡︎グループワーク後,酸性が「赤」,中性が「むらさき」,アルカリ性が「青〜緑」であることを確認する。
https://gyazo.com/16eef216e613e5a372c63a04735550f6 https://gyazo.com/c34fe732abb81ce172357a380f871e3e
・次に,教員は「ねるねるねるねのお菓子(ぶどう味)」を用意し,実際にパッケージの手順通りにつくり,色の変化をLiveで生徒に提示する(ぶどう味以外は発色の仕組みがむらさきキャベツとは異なるので今回は使用しないこととする)。このとき教員は,このお菓子の色の変化がむらさきキャベツの煮汁と同じ仕組みで起こることを口頭で伝えておく。 ・生徒はここで,お菓子の色の変化をよく確認し,①「お菓子の液性の変化」,および②「その変化を引き起こした原因物質」をお菓子のパッケージの成分表をもとに考えて,ロイロノート(キャンディチャート)にまとめる課題(家で自分でやってみて,まとめるという課題…【課題①】)を与えられる。
https://gyazo.com/17ee4dd4a37b6538cb42a5b98940a416 https://gyazo.com/1d5d5f6e3b8d749c9b698a5f39b815c9
最後に,教員は赤と青のアジサイの花(本当は萼)の鉢植えを取り出し,花の色の違いがむらさきキャベツの煮汁の色の変化と同じ仕組みで起こり,アジサイの育つ土壌の酸性〜アルカリ性の違いで起こる]ことを口頭で説明する。
https://gyazo.com/e07b472d7dec8f929d97599667d9664d https://gyazo.com/d275b064e174c31514bd5d165ce4f5f2
教員は赤,青それぞれのアジサイの花の土を少量コーヒーフィルター(土が漏れ出て色の変化が分かりにくくなるので,「二重」にするとよい)にとり,割りばし(または薬さじ)でほぐし,そこに水を適量加える。
https://gyazo.com/69479dadfd718e706a54f759e54f0745 https://gyazo.com/761f5a699633a845c79344c7a2b89d02 https://gyazo.com/9d464a14edc60d3d3f32cbca401e2448
さらに,そこにむらさきキャベツの液を加えようとして,そこで手を止めて生徒に問いかける。
https://gyazo.com/120532c088c5480d9bf1184f5cff5e9b https://gyazo.com/80da277d25d19cd30845eba03913670a
「みなさん,この結果はどうなると思いますか。アジサイ花の色がそのまま液性を表していると仮定すると,赤い花は「酸性」,青い花は「アルカリ性」ということになります。ぜひ,実際に実験してみてください。そして,「予想の色」,「実際の色」,その結果をロイロノート(データチャート)にまとめて提出してください。また,結果が予想と異なった場合,なぜ異なる結果になったのかを自分で調べて記述してください…【課題②】」
https://gyazo.com/4bada751c625b5d0d761494f198e29c7
(本時はここで終了)
(次回の授業時)
・生徒のロイロノート(データチャート)を確認,皆でシェアする(ロイロノート提出箱の一覧機能で)。
・おそらく,ほとんどの生徒が仮定とは異なる結果になったはずである。
➡︎どのような結果になったか,結果を受けて調べたこと,をグループで話し合う
➡︎「アジサイの花の発色にはアントシアニン以外にアルミニウムイオンが関係していること」,「生物の仕組みは複雑ですごく微妙な世界であること」,「いつもいつも,教科書に載っているような分かりやすい結果になるわけではないということが分かった」などの意見が出て,理科(生物)の世界の奥深さや繊細さが伝われば理想的。
<注意点>
自宅で実験をする場合は,保護者の許可をもらって,保護者といっしょに実験をしましょう。
生徒が自宅で実験する際,むらさきキャベツ液のつくり方は以下のYouTubeサイトが参考になる。
https://www.youtube.com/watch?v=KHk35MkAiAs
・指導に先立って,「ねるねるねるね」について予備知識を得るため,教員は以下のサイトを見ておくとよい。(基本的な化学反応を生かした楽しいお菓子♪ クラシエフーズ「ねるねるねるね」─あの製品はこうして生まれた! 研究開発エピソード)
・アジサイの花の色は,アントシアニンだけでなく,アルミニウムイオンの有無やその他の補助色素などの影響を受ける複雑な分子機構である。
以下のサイト参照。
・おそらく,ほとんどの生徒実験ではっきりとした結果は出ないと思われる。今回,実際に試してみたが,以下のような微妙な結果となった。写真では,「青花」の方が「赤花」よりもほんの少し赤い(写真ではほとんど分からないが,目視したら分かるくらいの微妙さ)。予想は,赤花は塩基性でもっと青や緑っぽい色になるのかと思っていた。しかし,そもそもその「塩基性」自体が相対的なものであり,そのpHは7以下であるのかもしれない。
https://gyazo.com/cee82a46611c121df994712b49f8506d https://gyazo.com/8d1e7815b20cdae84441e8dfef5f636d
・この実験の意義は,「教科書的な分かりやすい結果」ではなく,「『分かりにくく,複雑なことが現実の世界には多い』ということに触れるプロセス」にあると思われる。
<その他>
まだあじさいが咲いていない時季に実践する場合は,今後咲く花の色を予測してもおもしろい。
むらさきキャベツ以外にも,酸塩基指示薬として使える野菜類があります。
<おどうぐばこ>