アイデアのテンプレート化に対する批判
デザインシンキングは、ユーザー視点の価値設計の方法論を理論化して、カリスマやクリエーターが暗黙知でやってきたことを、みんなでできるようになった。でも、それは改善にはつながるけれど、新しい「意味」の提案に果たして向いているのか、という疑念が残ります。
「意味」の提案には責任が伴うし、社会のグランドデザインになってくる。従来のやり方でいいのかという、ポスト・デザインシンキングの問題提起が起きることは必然だと考えていたので、ベルガンティ氏の思想に触れ、合点がいきました。私も「エディトリアル・シンキング」という考え方をここ数年喧伝してきたからです。そこでは、リサーチだけではあぶり出せない、異なる領域同士の接合やアイデアの跳躍方法に加え、いかに新しい価値を基軸とした社会変革の意志を込めるのかといったことを中心に話してきました。むしろ、アイデアのテンプレート化に対する批判です。 小西:新しい「意味」を提起して、その価値を共有するコミュニティーを通じて共創する運動を、私も「動詞のブランディング」という言葉で表現しています。その主体としてのリーダーシップが企業なのか個人なのかは分かりませんが、世の中を変える大きな力を生み出せないかと。