薔薇寓話07
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魔法薬学の授業はハロウィーン・パーティの翌週から開講されることになっていた。月曜の朝には、家からのふくろう便が新任の教師に関するさまざまな情報をたずさえて戻って来た。食堂で、生徒たちは朝食もそこそこに、互いの知識をつきあわせて新しい先生の傾向と対策を検討した。甘い期待は霧散した。
「ホグワーツ卒業生のいとこが言うには、あの先生はバリバリのスリザリン生だったんだって。闇の魔術マニアで、自分の知識を鼻にかけてひとをばかにして、先生方からも嫌われる嫌なやつだった。お悔やみ申し上げる! って」
「うちからも言ってきた。冗談がつうじなくて、怒りっぽくて、校則をやぶる同級生を毛嫌いしていて、ものすごい毒舌家だったって」
「おえーっ」一人がゲロを吐くまねをした。「マクゴナガルとフィルチを足して割って輪をかけたような感じじゃないか」
誰かが走り描きした羊皮紙の切れ端がまわってきた。マクゴナガルのナイトキャップをつけ、チェックのガウンをはおったスネイプが背後にトロルをはべらせて、「規則違反者を罰するのは我が楽しみだ」とフィルチのようにほくそ笑んでいる。さんざん笑ったあとで、誰かがぽつりと言った。
「きっと、もっと悪いよ‥‥何と言ってもスリザリンだもの」
別のテーブルでは上級生たちがセブルス・スネイプの経歴について話している。
「ーープラハ魔法大学で医化学博士号を取っている」一人が読み上げた。「しかもルドルフ学寮の首席‥‥いけすかないが、馬鹿じゃないらしい」
「カレル大学で哲学博士号取得、ともある。何だ? カレル大学って」
「プラハのマグルの大学じゃないか?」
「マグルの出身なの?」
「いや、そうでもないみたいだ」紳士録のうつしをかきまわしながら相手は答えた。「同姓者には教師とグリンゴッツ勤務が多いな‥‥大半はアメリカとインドに在住‥‥と。大おじが二人、おじさんが一人、ホグワーツの出身だ。でも、あれ?」彼は首をかしげた。「レイブンクローが二人に、グリフィンドール一人だ」
「‥‥一体、こんな時期にプラハくんだりで勉学においそしみあそばしたなんて、どんな奴なんだ?」
グリフィンドールのテーブルで交わされるのは、いつもそんな会話だ。「ろくな奴じゃないさ! 『例のあの人』との戦いが一番激しかった時期にだぞ‥‥出来のいいやつは魔法省に入ったし、そうでないやつだって召集に応じたんだ。学業を中断したのも大勢いた。数多くのグリフィンドールの卒業生が『あの人』との戦いで死んだんだ。それが、プラハで博士号だと!」
「臆病者なんだろ。僕は彼が『あの人』のスパイだったと聞いても驚かないね。何せ、スリザリンだ。学生時代、ジェームズ・ポッターとライバルだったと言うけど、しょせん器が違うのさ‥‥」
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◆"Allegory of Rose" is a fan-fiction of J.K.Rowling's "Harry Potter"series.
◆"Allegory of Rose" was written by Yu Isahaya & Yayoi Makino, illustrated by Inemuri no Yang, with advice of Yoichi Isonokami.
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