〇〇は死んだ
vaporwaveがどのようにしてインターネットで作られ、そして、壊されたか。——ふさわしい死に方をした反消費主義の音楽についての考察
2016年にvaporwaveについて書くのはほとんど不可能だ。まだ知らない人々は、仮に彼らがvaporwaveを聴いたとしても、そのジャンルに当惑することも多いだろう。その一方で、ファンたちは「Vaporwave is dead.(vaporwaveは死んだ)」と言う。ほとんどの人が聴いたことがなく、ファンにはもはや存在しないと言われている音楽について、どのようにして書けばいいというのだろうか? あるいは、それと同じくらいに重要なのは、なぜ書くのか?ということだ。
そのジャンルがそれでも続いている理由は、vaporwaveの歴史そのものが説明しているといえるだろう。今も私たちの生活の大部分を占めている巨大な経済の力や社会の力、そういったものに対する反応の中でvaporwaveは生まれた。グローバル化、暴走する消費主義、そして、特にそれらの中で製造されたノスタルジアについての反応だ。私たちの時代精神のこのような側面を明白に扱った音楽はほかに例を見ない。もしvaporwaveがまだ重要なものであるなら、それらが扱っていることもまた重要だということである。
どこかから持ってきた音楽をスローダウンし、リミックスしている、そして、少なくとも80年代や90年代にとりつかれているということがその一部だと定義される音楽――インターネットで生まれ、その歴史のほとんどがインターネットにある最初のジャンル――、もしあなたがそんなvaporwaveを聴いたことがないなら、それでかまわない。事実、そこがある意味ポイントだ。vaporwaveはpopを意識した、ある種のパロディで、決して大衆にアピールしようとしたことはないのだ。そのことには私たちの検証は必要ない。それはカウンターカルチャーのどんなものにも当てはまることだからだ。つまり、多くの人々が受け入れるようになると、物事の真偽に対するその主張が薄められてしまうのである。無理に大衆にアピールする形にしようとすることは、その存在意義を薄めてしまうのだ。歴史的な例、音楽評論家Lester Bangsの「アメリカ中西部でロングヘアーがオーケーになったとたんに、どのように60年代が終わったか」という引用について考えてみてもらいたい。
そのため、注目を集めるvaporwaveはつまらなくなってしまったように感じた者も、ファンやクリエイターの中にはいたかもしれない。ジャンルを濃く、複雑にしてきた者たちにとっては、それを生きたままに埋葬し、ほんとうに死ぬ時がくる前にその死を公にアナウンスすることはほとんど義務のようなものだったのだ。比較的少ない人数の、vaporwaveに熱くなっている人々のグループが、ジャンルのアイデンティティのボーダーをまだ規制できているうちにそのプロジェクトを終わらせる、それはおおむね賢明だと思われる。しかし、もともとvaporwaveが作られるようになった理由は現代の問題にまだ関連していることだ。例えば、資本主義への批判、20世紀に成し遂げられなかったユートピアへの辛らつな見解、消費主義、現実逃避、グローバル化など。vaporwaveのヴィジョンはまだ枯れたり、しなびたりしてはいない。フレッシュで、核心をついていて、“future funk”や“mall soft”などの細分化したサブジャンルの中で成長している。
だから、vaporwaveは死んだのだ。vaporwave万歳。
々がvaporwaveは“死んだ”と言う時、マーケティング用語そのものの流用、そのジャンルが淘汰されてしまわないようにするために“売り切り”行為の前に行なわれた計画的、あるいは、人工的な衰退の流用であると、その宣言をとらえた方がいいだろう。vaporwaveはhip hop、pop、カントリーミュージックのように製品にはならない。だから死んだ。ああいった風に売られることはこれまでもなかった。そう、その意味では、常に“死んで”いたのだ。
vaporwave万歳。
トンデモポップというタグは、幅広い音楽性を持った音楽を内包するタグでありジャンルではないのです。
何かの流行の影にはつねに流行から外れた
特異な音楽というものが存在していますが、
トンデモポップというものは流行にかかわらず、
素晴らしい特異な表現や奇抜な発想を
ポップへと融合させた「とんでもない曲」へと
名もない誰かから贈られるべき
「称号」としての存在であればいいと思います
だからです、だからですよ?
トンデモポップを絶対ジャンル化するべきではないのです、死んだなんて大げさにいいますけど、
ジャンル化なんてしたらほんとに死にますから。
この曲は「とんでもない」という称号は、
その時々、リスナーへ素晴らしい表現を叩きつけた
とんでもない曲にリスナーから与えられる称賛であって、作者がこれはトンデモポップというジャンルですと名乗るものじゃないと思います。
トンデモポップというタグは
タグのままでいいのです。
称号であることが防御装置として機能し、
リスナーの驚嘆によって
合成音声シーンの未来の姿を
克明に映し出すことができるのです。