弥豆麻岐神
諸説 大年神の系譜中の神々については、農耕や土地にまつわる神を中心としたものと捉えられ、民間信仰に基づく神々とする説や、大国主神の支配する時間・空間の神格化とする説がある。渡来系の神々が含まれているところには、渡来系氏族の秦氏の関わりが指摘されている。また、この系譜の、須佐之男命・大国主神の系譜から接続される本文上の位置に不自然さが指摘されており、その成立や構造について、秦氏の関与や編纂者の政治的意図が論じられている。一方、『古事記』全体の構成からこの位置に必然性を認める説もある。大年神の系譜中に羽山戸神の子孫の系譜が派生して特立されているが、その系譜には何らかの特別な意義があると考えられる。この神々の性格は、耕作から収穫までの一年の農耕の模様を意味する神々であるという説があり、その名義や誕生の順序を農耕の次第の反映として捉える解釈が試みられている。また、本来はそれぞれ成立背景を異にする神々であったのが、新嘗祭を背景に統合化されたものとする説がある。弥豆麻岐神の名義は、マキについて、灌漑のことを言うマカセ・マカスという語の四段活用の古形とみなす説があり、水を引き入れる意で、田の灌漑の神であるとする。諸国において、川の沿岸に「水巻」を名とする地名があるのも関連が指摘されている。また、水を田に撒く宗教儀礼の神話的投影とする説がある。田植えの神といわれる若沙那売神の次に灌漑の神が生まれていることに、農耕上のつながりが指摘されている