愚管抄_天皇・貴族に奉仕する武士
天皇・貴族に奉仕する武士
白河院は堀川院に御譲位ありて、京極の大殿は、又後二条院に執政ゆづりてをはする程に、堀川院御成人、後二条殿又事のほかに引はりたる人にて、世のまつりこと、太上天皇にも大殿にも、いとも申さでせらるヽ事もまじりたりけるにやとぞ申すめる。
白川院御むすめに郁芳門院と申女院をはしましけるが、云ふばかりなくかなしふをもいまいらせられけるに、猶三井の頼豪が霊のつきて、御ものヽ気のをこりけるを、三井の増誉、隆明などいのり申けれどかなはざりければ、山の良真をめして、中堂の久住者二十人ぐして参りて、いみじく祈やめまいらせて、よろこびをぼしめしける程に、にはかにうせさせ給にけり。をどろきかなしみて、やがて御出家ありけるに、
ほりかはの院うせ給てける時は、重祚の御心ざしもありぬべかりけるを、御出家の後にて有りければ、鳥羽院をつけまいらせて、陣の内に仙洞をしめて世をばをこなはせ給にけり。光信・為義・保清三人のけびいしを朝夕に内裏の直(とのゐ)をばつとめさせられけるになん。そのあいだにいみじき物がたりどもあれども、大事ならねばかきつけず。
くらいの御時三宮輔仁親王をおそれ給けるなどいへり。行幸には義家・義綱などみそ(か)に御こしの辺、御後につかうまつらせられければ、義家はうるはしくよろいきてさぶらいけりなどこそ申すめれ。